ブルースカイによると、14日には一日で100万人を超える新規アカウントが開設され、この1週間で利用者が400万人以上増えた。
新しいSNS「Bluesky」(ブルースカイ)の利用者が急増している。運営する米ブルースカイ社によると、先週後半から連日、1日に100万人規模の新規アカウントが開設され、ユーザー数は2000万人に迫っている。Xと画面上の見た目や使い方が似ていることから、代替のサービスとして人気が高まり、米国のアップルとグーグルのアプリランキングで無料部門の1位となった。背景には、X(旧ツイッター)を率い、トランプ次期米政権で要職に就く実業家イーロン・マスク氏への不満があるとみられ、ブルースカイは“X離れ”の受け皿にもなっている。
ブルースカイは、Xの共同創業者、ジャック・ドーシー氏らがアメリカで立ち上げた新しいSNSだ。2023年2月にスマホアプリがリリースされ、アメリカや日本を中心に利用者を増やしてきた。今年2月には招待制が廃止されて誰でも登録できるようになった。8月末に、ブラジルの最高裁判所がXの国内利用を禁じた後には、代替先としてブルースカイの新規登録が急増した。
米大統領選では、Xを保有するマスク氏がトランプ氏の支持を表明し、7500万ドル(約112億円)の献金を行ったり、X上で対談を行ったりしたことで、Xのサービスは政治色が濃くなった。選挙後には、マスク氏が「政府効率化省(DOGE)」のトップに就くことが発表され、政権との距離がさらに近づいた。その結果、トランプ氏やマスク氏に不満を持つユーザーがXからブルースカイへ転出。ブルースカイの公式発表では、18日午前に登録ユーザーが全世界で1900万人を超えた。アプリのリリースから1000万人を超えるまでに1年7カ月を要したが、そこから2カ月でほぼ倍増した。
これまでも、Xのアルゴリズムの変更などに合わせて、Xユーザーがブルースカイに流入することはあったが、大統領選をめぐるトランプ氏とマスク氏の蜜月による影響は桁違いに大きかった。青を基調としたブルースカイのロゴマークは旧ツイッターを想起させ、画面のデザインや使い勝手も旧ツイッターに似ている。メタ社が運営する短文投稿SNSの「Threads」(スレッズ)もアプリランキングで2位になるなど勢いを増しているが、ブルースカイはXからの最も有力な移行先となっている。
X離れは一般ユーザーだけにとどまらない。英有力紙ガーディアンは13日、Xの公式アカウントへの投稿を中止すると発表。「Xは有害なプラットフォームであり、所有者であるマスク氏は、その影響力を利用して政治的議論を形作ることができている」と批判した。今後、メディア各社がXと距離を置く可能性も指摘されている。
ブルースカイ社もXを強く意識しており、同社のジェイ・グレイバーCEOは15日、ブルースカイへの投稿で「私たちはブルースカイを健全なソーシャル・ネットワークにすることに多大な労力を割いている。このアプリは、ユーザーが見たいものや見たくないものを選んだり、どう交流するか選択する機会が与えられている」とアピールした。
Xではオーナーのマスク氏の投稿が優先的に表示されるのに対し、ブルースカイでは、外部の開発者が作った美味しい料理や猫の画像の投稿を集めるアルゴリズムが人気を集めるなど、まったく異なるユーザー体験が人気を集めている。
世界的に著名なブルースカイ社のソフトウェア開発者、ダン・アブラモフ氏は、10月の来日時の講演で、「既存のサービスでは新しい経営陣が入ったりして、方向性が変わることがある。ユーザーの視点で考えると、それは本当は正しくない」と指摘している。
ブルースカイの特徴は、Xやフェイスブックのようにひとつの企業が中央集権的に管理する仕組みとは異なり、利用者や開発者の連携によって成り立つ「分散型」のサービスであることだ。画面上の見た目や使い方はXとよく似ているが、基盤となる技術や思想が分散型で、プログラムもオープンソースとして公開されている。
日本のブルースカイのコミュニティは、アメリカなど他の国と比べても熱量が高く、開発者らによるミートアップと呼ばれるイベントを何度も開催。ジェイCEOがオンラインで参加するなど、アメリカのブルースカイ社からも注目されている。(西山諒)
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