ビジネスアナリストの主な役割は、組織内外のステークホルダーを巻き込んで組織の変革を実現すること。より広く、より深く企業の活動を注視する能力が要求される。
第2回:ビジネスアナリシスの知識体系BABOKガイドとは(前編)
第3回:ビジネスアナリシスの知識体系BABOKガイドとは(後編)
第7回:戦略と実行の橋渡し、ビジネスアーキテクチャの役割――デジタル時代を生き抜く、企業の新しい羅針盤
第8回:要件定義をツールで行なう:ビジネスアナリシスツールの紹介
欧米ではビジネスアナリストは職種として広く認知されています。日本でも、昨今のDX推進の流れで、ビジネスの戦略とプログラムやプロジェクトの整合性を担保するビジネスアナリストの役割が注目されています。
経済産業省とIPAにより2022年12月(2024年7月改訂)に発刊された「DX推進スキル標準」では、DXを推進する重要な人材として、ビジネスアーキテクトをあげています。
ビジネスアーキテクトは、「デジタルを活用したビジネスを設計し、一貫した取組みの推進を通じて、設計したビジネスの実現に責任を持つ人」と定義されています。ビジネスアーキテクトが持つべきスキルとして、多岐にわたるビジネス関係や、テクノロジー関係のスキルがリストアップされており、その中にビジネアナリシスのスキルが含まれています。
BABOK(R)は、ビジネスアーキテクチャーを、ビジネスアナリシスが取り扱う専門分野の一つとして取り上げています。
本稿でのビジネスアナリストは、DX分野を含めたBABOK(R)による広義な意味合いとなります。
BABOK(R)ガイドは、ビジネスアナリストが持つべき基礎コンピティンシーを以下に示しています。
ビジネスアナリストのコンピティンシーを語る際、よくある質問として、ビジネスアナリストとプロジェクトマネジャーとの違いがあります。
プロジェクトマネジメントのフレームワークであるPMBOK(R)ガイドは、プロジェクトマネジャーの基礎コンピティンシーを以下の大分類で示しています。
上記の大分類から詳細化されているコンピティンシーを見ると、テクニカルスキル(プロジェクトマネジャーにはプロジェクトをマネジメントするに特化したテクニカルスキル)以外は、リーダーシップを含む人間関係スキルとビジネス知識に関しては、大きな違いがないように見えます。
しかし、リーダーに求められる概念化思考(コンセプチュアルスキル)に多少の違いがあると筆者は考えます。ビジネスアナリストは、プロジェクトマネジャーより高度なコンセプチュアルスキルが求められると思います。
コンセプチュアルスキルとは、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」で、ビジネスで注意すべき視点を持つことです。ビジネスアナリストの主な役割は、組織内外のステークホルダー(プロジェクトマネジャーを含む)を巻き込んで組織の変革を実現することですから、プロジェクトマネジャーより、より広く、より深く企業の活動を注視する能力が要求されます。
基礎コンピティンシーにあるツールとテクノロジーなどのテキニカルスキルは、BABOK(R)のフレームワークを学習し、さまざまなツールやテクニックを実践で適応することで身に付けることができます。コミュニケーションや人間関係のヒューマンスキルは、研修や自身の日々の気付きで醸成できると考えます。
筆者がビジネスアナリストにとって重要であり、かつ難易度が高いコンセプチュアルスキルの醸成に関しては、多岐に渡る業務を経験してもらうのが、一つの方法ですが、唯一無二の方策はないように思います。
ビジネスアナリストの育成には企業でシステマティックな育成へのロードマップを策定する必要があります。はじめは外部のコンサルタントに伴走してもらいながら徐々に自立していくのも方法論の一つです。
Ph.D.、MBA、PMP、北海道大学大学院非常勤講師、 IIBA日本支部理事
さまざまな業種(金融、製造、小売、卸し、石油)の多国籍企業で30年以上、プロジェクトマネジャーや、PMOマネジャーとして、主にグローバルIT開発プロジェクトに従事PMI日本支部の事務局長を経て、現在は(株)アスカプランニング代表取締役として、プロジェクトマネジメントや、ビジネスアナリシスのコンサルティングや研修活動を行う。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授