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» 2009年03月13日 08時00分 公開

コストを抑えつつも高品質なサービス開発で利益を追求するExecutiveインタビュー(2/3 ページ)

[聞き手:浅井英二,ITmedia]

ITコストを最低ラインで抑え続ける

ITmedia 情報システムのあり方について、開発から運用まで自社で行う会社もあるし、情報子会社を持ったり、ベンダーにアウトソーシングしたりする企業もあります。楽天の場合はいかがでしょうか。

杉原 創業以来、情報システムは自前主義です。もちろん協力会社にコーディングや運用の面で支援いただいていますが、人員構成を見てもほとんどが当社の社員です。

 わたしが3年前に開発部門を統括するようになってまず注力したのは、技術者自身や彼らがかかわっている業務の状態を可視化することです。彼らの評価は難しいのです。システムが100%稼働していても誰も褒めてはくれませんが、1%でも稼働率を落としたらクレームが来てしまう。サービスを定常的に運用することがどれほど大変なのかを分かってもらうために、調達から運用、償却までサービス開発におけるすべてのプロセスを定量化して、経営と現場が意思疎通できる共通言語にしました。

 楽天市場や「楽天オークション」といったサービス群もKPIで月次管理できるようにしています。例えば楽天市場は、開発コスト/流通総額を1つの指標にしています。現在は年間流通額が6638億円で、その約1%がITコストです。仮に流通総額が2兆円になったときは1%を切ることが望ましいです。インターネット事業の良いところはコストの低減率が高い点なので、それを実現しないと最終的には株主からも指摘されてしまいます。ただし、ずっと同じサービスメニューを運用するわけではなく、毎年新たなサービスに対して大規模投資をしながら、既存の運用コストを抑えなくてはなりません。難しい課題ですが、開発メンバーにとっては技術チャレンジなので楽しんでいます。

ITmedia 売上高に占めるIT投資の割合について、一般的に製造業だと3%程度で、ネット企業はさらに大きな割合を占めると言いますが、楽天は実に低いですね。

杉原 (商品購入する際に使う)「買い物かご」や「ページ作成ツール」といったサービス機能単位でのROI(投資利益率)を細かく見ています。加えて、プロジェクトそのものを7種類の管理シートで判定する体制が整っています。新規プロジェクトを立ち上げる際には、必ずシート項目に合致しているか、それ以上のリターンが得られるかということを精査します。プロジェクトが走り出した後も、プロジェクトマネジャーが常に管理して、日次で事業責任者やメンバーと情報共有しています。自分たち自身できちんとせざるを得ない状態をつくり出しているのです。

 楽天市場であれば、たくさん物を売ることが最大のKPIになります。物が多く売れている状態にするには、サイトへどれだけの人がアクセスして、そのうちの何人が購入するか、彼らがどの位の頻度で訪れるか、単価はいくらかという点が指標になります。それらが上向きになるような施策を継続的に打っていくことが全体の底上げにつながります。

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