岐路に立つ政府、いかなる道を進むべきか生き残れない経営(2/2 ページ)

» 2009年04月14日 08時15分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]
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偏りを排除、柔軟な対応を

 歴史が示す通り、単純に大きな政府、小さな政府という二者択一ではいかない。サッチャーリズムは英国病を克服し、小泉政権では失業率や中小企業の倒産率などが改善された。しかし、この世界的な不況下においては、政府が介入して経済を回復させなければならない。財政赤字であるが財政出動も金融緩和も必要であろう。臨機応変な対応が求められる。

 基本的に資本主義は、自助の精神による自由競争をベースとして、価格メカニズムが働きやすくすることにより、資源配分を適正化すべきである。しかし、資源配分をより適正化するために、あるいは自由競争の不公正や欠陥などのゆがみを是正するために、一定のルールを決め、それを柔軟に見直すべきである。

 肥大化した官僚組織を簡素化するなどの構造改革は必要である。例えば、非正規雇用者が増えるような雇用制度の規制緩和から生ずる問題に対しては、すばやく同一労働同一賃金や最低賃金制度のかさ上げなどのセイフティーネットを設定すべきだった。

 ルールが行き過ぎたときのすみやかな対応も必要だ。偽装建築を防ぐために施行された改正建築基準法は、予期せぬ建設業不況に拍車をかけて「官製不況」とまで言われた。問題になった時点でルールの見直しによる緩和策が必要だった。目下話題になっている医薬品の通販規制の問題も、杓子定規の規制ではなく、実態に即したルールを検討し、臨機応変に対応すべきである。政府には、事態の変化に敏感になり即座に対応する聡明さが求められる。

 聡明な政府の下に、政府の介入と新自由主義の中庸を進めてもらいたいものである。


プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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