昨年9月半ばの「リーマンショック」以降、深刻な経済危機が世界中を襲っている。その勢いは2009年に入ってからも止まらない。経済のけん引役として期待される新興国も厳しい状況だ。果たしてこの暗闇から抜け出せるのだろうか。
2008年秋も深まるころから、世界的に景況感が急悪化してきた。とりわけ厳しさが目立つのが自動車産業だ。
苦しさが最も典型的に表れているのが、アメリカ株式会社の象徴とも言えるビッグスリー。政府に対して税金での支援を要請しているものの、連邦議会上院でいったん否決された。ただいかに反対論が根強くても、何らかの形で支援せざるを得ないだろう。当面の雇用を守るという観点から言っても、破たんさせるという選択肢はあるまい。とりあえず破たんさせてから再建するというシナリオもないことはないが、ショックが強すぎるかもしれない。(※編集部注 2008年12月19日に米政府はGMおよびクライスラーに対して174億ドルの融資を行うと発表した)
米国だけではない。世界でも優良企業と目されてきたトヨタ自動車は、2008年度下半期が赤字になるのだという。ホンダも同様だ。国内販売が落ち込むと同時に世界でも米国、ヨーロッパでの販売が落ち込み、大幅な生産調整を迫られている。派遣社員を解雇し、生産拡大のための投資は当面棚上げせざるを得なくなっている。また超低価格車「ナノ」を発表して世界を驚かせたインドのタタ・グループ。ラタン・タタ会長は100社近いグループ各社に対して、極めて重要なM&A以外はすべて中止。キャッシュフロー経営に徹するよう指令を出した。そして中国では2008年に1000万台を達成するとみられていた国内販売が11月、12月と大ブレーキがかかった。2009年も1000万台には届かないかもしれない。
こういった自動車産業苦境というニュースの中で、特に注目すべきはインドと中国だと言えるだろうか。なぜなら、これらの国は世界が不況に陥っている中でも何とか成長を保つことができるだけでなく、世界経済をけん引する機関車たりえるという見方があったからである。
米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発する金融危機が勃発した2007年夏。深刻度が増すにつれ、先進国経済と新興国経済のデカップリング論を唱える人々もいた。要するに先進国が落ち込んでもアジアの二大新興国である中国とインドの成長率がキープされれば、世界経済をけん引することができるというのである。
実際、通常の為替相場で換算すると中国はまだ米国、日本、ドイツに次いで世界の第4位のGDP(国内総生産)であるが、この換算を購買力平価で行うと、中国は2位に躍り出るし、インドも日本に次いで第4位ということになる。それだけの規模があって、なおかつ国内市場の成長が著しければ、世界経済をけん引できるだろうという考え方にも一理あった。
しかし現実には、中国やインドも大幅に減速していることがはっきり表れたのが上に書いたようなニュースである。サブプライムローンの影響は小さいとされていた日本も、海外での需要減退のショックがいかに影響するかを如実に味わっている。
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明治学院大学 経済学部准教授