ラピダス、次世代半導体量産へ試作ライン立ち上げ開発加速 「日の丸半導体」復権なるか

次世代半導体の国産化を目指すラピダスは1日、北海道千歳市の工場で試作ラインを立ち上げた。月内に稼働を始め、2027年を計画する量産開始に向け開発を加速する。

» 2025年04月02日 08時46分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 次世代半導体の国産化を目指すラピダスは1日、北海道千歳市の工場で試作ラインを立ち上げた。月内に稼働を始め、2027年を計画する量産開始に向け開発を加速する。「日の丸半導体」を復権したい政府は財政支援で後押しし、すでに総額1兆7225億円を投じることを決定。ただ量産化にはあと3兆円程度の資金調達が必要となるなど課題も多く残されている。

ラピダスが次世代半導体の国産化を目指す北海道千歳市の工場(同社提供)

7月に最初の試作品

 ラピダスは米IBMと連携し、回路線幅が2ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の半導体生産技術の開発に取り組んでいる。3月末までに千歳市の工場に生産に必要な装置を搬入、4月中に試作ラインを稼働させ、7月に最初の試作品が完成する見込みだ。

 ラピダスの小池淳義社長は1日に開いた記者会見で「量産技術の開発は非常に難しい。歩留まり(良品率)の確認や信頼性の確保をしっかりやることが大きな課題になってくる」と述べ、量産化に向けた決意を強調した。

政府も開発を後押し

 スマートフォンや自動車などさまざまな電子製品に使われる半導体は経済活動に欠かせない重要な戦略物資だ。かつて日本は半導体で世界をリードした時期もあったが、その後凋落。政府は半導体産業の再興を目指し、巨額の補助金を投じる支援策を展開している。

 特にラピダスには、これまで最大9200億円の支援を決定。3月31日には最大8025億円を追加支援すると発表した。ラピダスは追加分に関し、試作や技術開発などに最大6755億円を充当。半導体チップを製品として完成させる「後工程」の技術確立に最大1270億円を使う。

なお3兆円の調達必要

 武藤容治経済産業相は1日の記者会見で、追加支援に関し「次世代半導体は競合他社が量産を実施できておらず、国の一歩前に出た支援が必要」と強調した。

 政府は補助金のほかにも1千億円を出資する検討を進める。関連法案を今国会に提出しており、可決されれば25年後半にも出資が可能になる。民間金融機関の融資に債務保証も付ける。さらにラピダスは民間企業からの1千億円の資本増強にもめどを立てた。

 ただ量産化には5兆円規模が必要とされる。ラピダスは今後、3兆円程度の調達を迫られることになる。

 しかし量産の道筋はまだ見えず、海外勢に対する競争力や販路などの課題もある。今後の資金調達では、試作ラインで実績を積み上げられるかがカギを握る。

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