情報システムの黎明期から次々と発明される新しい技術に携わってきた積水化学工業の寺嶋氏は、既成の概念にとらわれずシステムの「見える化」に取り組んでいる。企業を変えていくような経験ができるIT業界で楽しみながら仕事をして欲しいという。
ITmedia エグゼクティブの会員に対するインタビュー企画「エグゼクティブ会員の横顔」。第6回は、住宅・建材、配管資材などの樹脂加工、化成品、高機能プラスチックなどを中心に製造する総合化学企業である積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長 寺嶋一郎氏に話を聞いた。
――これまでの仕事の歩みについて教えてください。
寺嶋 わたしは1979年に積水化学に入社し、生産技術を担当していました。当時はファクトリー・オートメーション(FA)の初期のころで、工場でプラスチックを形成するための押し出し機の温度や速度などを制御したり、生産管理を行うために、自分たちでマイクロコンピューター用のマザーボードの設計、製作、OSを書き、制御や生産管理を開発していました。積水化学は早くから取り組んだ企業ではないでしょうか。そのため斬新で面白い経験を積めました。
その後1985年に社内の制度でマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学しました。当時は人工知能ブームが起こったり、オブジェクト指向が出てきたりと、コンピュータの世界でも新たな動きがありました。ちょうどそのころ、住宅のハイム事業の15周年記念イベントにヘンリー・キッシンジャー元米国務長官を招こうとしたのですが都合が悪くなり、代わりに人工知能の第一人者だった米スタンフォード大学のエドワード・ファイゲンバウム教授を招くことになりました。
お招きするからには人工知能を知らなければと思い勉強会を始めました。それが発展し、人口知能関連のビジネスに取り組むことになり、ベンチャーを買収して1986年にアイザック(ISAC:International Sekisui AI Corporation)を設立しました。
そこでは、人工知能を応用して積水化学のユニット住宅のシステム化を行いました。ユニット住宅は自由設計であるため、最良の間取りを提供するためには敷地に対してどのような部品を組み合わせるのが良いかを考える必要がありました。当初は部品選択を人手で行っていましたが、20万点もの部品があるためかねてよりシステム化が望まれていました。
しかし、部品の特長を理解せずにはシステム化は難しいので、他社に依頼できず苦労しながらも自分たちで開発しました。窓、壁階段など部品をオブジェクトととらえて、オブジェクト指向技術を利用して部品を選び展開するシステムを開発しました。このシステムがなければ、高度成長期に飛躍的にユニット住宅は売れなかったと思います。ITがなければできない業務改革の大きな成功例であると思っています。
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明治学院大学 経済学部准教授