「ユーザーに喜ばれるシステムをワクワクしながら作る」――積水化学工業・寺嶋氏エグゼクティブ会員の横顔(1/2 ページ)

情報システムの黎明期から次々と発明される新しい技術に携わってきた積水化学工業の寺嶋氏は、既成の概念にとらわれずシステムの「見える化」に取り組んでいる。企業を変えていくような経験ができるIT業界で楽しみながら仕事をして欲しいという。

» 2009年09月28日 07時45分 公開
[聞き手:福盛田結花,ITmedia]

 ITmedia エグゼクティブの会員に対するインタビュー企画「エグゼクティブ会員の横顔」。第6回は、住宅・建材、配管資材などの樹脂加工、化成品、高機能プラスチックなどを中心に製造する総合化学企業である積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長 寺嶋一郎氏に話を聞いた。

積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長の寺嶋一郎氏 積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長の寺嶋一郎氏

人口知能の第一人者が契機に

――これまでの仕事の歩みについて教えてください。

寺嶋 わたしは1979年に積水化学に入社し、生産技術を担当していました。当時はファクトリー・オートメーション(FA)の初期のころで、工場でプラスチックを形成するための押し出し機の温度や速度などを制御したり、生産管理を行うために、自分たちでマイクロコンピューター用のマザーボードの設計、製作、OSを書き、制御や生産管理を開発していました。積水化学は早くから取り組んだ企業ではないでしょうか。そのため斬新で面白い経験を積めました。

 その後1985年に社内の制度でマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学しました。当時は人工知能ブームが起こったり、オブジェクト指向が出てきたりと、コンピュータの世界でも新たな動きがありました。ちょうどそのころ、住宅のハイム事業の15周年記念イベントにヘンリー・キッシンジャー元米国務長官を招こうとしたのですが都合が悪くなり、代わりに人工知能の第一人者だった米スタンフォード大学のエドワード・ファイゲンバウム教授を招くことになりました。

 お招きするからには人工知能を知らなければと思い勉強会を始めました。それが発展し、人口知能関連のビジネスに取り組むことになり、ベンチャーを買収して1986年にアイザック(ISAC:International Sekisui AI Corporation)を設立しました。

 そこでは、人工知能を応用して積水化学のユニット住宅のシステム化を行いました。ユニット住宅は自由設計であるため、最良の間取りを提供するためには敷地に対してどのような部品を組み合わせるのが良いかを考える必要がありました。当初は部品選択を人手で行っていましたが、20万点もの部品があるためかねてよりシステム化が望まれていました。

 しかし、部品の特長を理解せずにはシステム化は難しいので、他社に依頼できず苦労しながらも自分たちで開発しました。窓、壁階段など部品をオブジェクトととらえて、オブジェクト指向技術を利用して部品を選び展開するシステムを開発しました。このシステムがなければ、高度成長期に飛躍的にユニット住宅は売れなかったと思います。ITがなければできない業務改革の大きな成功例であると思っています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆