「世界のスタンダードに合わせた戦略を」――カルビー・松本会長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/3 ページ)

» 2010年03月25日 08時15分 公開
[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]

重複を避ける

 松本さんのキャリアの始まりは伊藤忠商事でした。松本さんは、この典型的な日本企業で、給料も地位も高いが権限がない人たちを多く見てきました。その経験から、人は、むしろ、簡単な理屈で動くことを察します。以下が、松本さんの経営方針でもあります。


(1)豊かさ

(2)わくわく

(3)自分の成長


 豊かさはお金であり時間です。わくわくはチャレンジ精神、そのためには、権限を委譲しないといけません。仕事を通じて成長したいと、優秀な人は考えます。カルビーでは、品質へのこだわり以外に、この人事面・組織面でもたくさんのこだわりがあるといいます。松本さんは、これを変えようとしています。こだわりはリダンダントである、つまり、重複していることが多いのです。重複はコストでしかありません。松本さんは、組織的な重複に対して、以下の方策を実施しています。


(1)簡素化

(2)透明化

(3)分権化


 カルビーの前組織は類を見ないマトリックス経営だったそうです。これを徹底的に簡素にしました。代わりに会長兼CEOの権限はゼロ、その権限のすべてを社長に渡しています。松本さんは、拒否権だけを持ち、結果責任を持っています。トップには、Commitment(約束)とAccountability(結果責任)の意識が必要、結果が駄目だったら身を引く覚悟が必要です。

 松本さんは、2010年度は以下のコミットメントをカルビーのステークホルダーに公表しています。


経営計画の達成

連結純売上1520億円

営業利益100億円

税前利益80億円

純利益45億円

成長戦略の策定と実行(イノベーション)海外戦略・新商品・ペプシコとのプロジェクト・M&A・New business

コストリダクションの徹底

Diversityの推進

社会貢献委員会の発足と活動


 松本さんは、昨今の不況にふれ、世の経営者に警鐘を鳴らします。リーマンショックがあったからという言い訳は通用しない、なぜなら、世の中はいつも変わっているわけですから、経営者としてコンティンジェンシープランを考慮していないことはありえないことなのです。その目標意識は徹底していて、完全な目標達成の100と若干の上触れである101の間しか認めていません。100やるといったら、結果を100と101の間におさめるのが方針です。110やった人を褒めるのではなく、1年先が読めないのかと叱咤します。反対に、本当は110できる人が100という計画を持って来るのはNGなのです。厳しいが訓練すればできると考えています。正確性は現場でないと分からないから、会社に一日中いる経営者は駄目で、現場主義を奨励します。

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