Annesha Style社のオーナー社長であるU.M.Ashek氏に、日本について尋ねたところ、興味深い答えが返ってきた。彼は、日本は極めて魅力的な市場であるが、“ゆっくりと”ビジネスを進めていきたいと語った。彼は“slowly”という言葉を再三にわたって用いた。その真意は、日本企業や日本市場が求める特殊な要求に対応する難しさだ。
日本企業の多くは新興国企業に生産をさせ、そのコスト競争力で日本市場に投入する。従って、日本企業は、新興国企業に日本市場に合った特殊な仕様や品質を要求する。このことこそがAshek氏が警戒を示す理由だ。
例えば、日本企業は極めて高い品質を要求するため、細かく厳格な品質管理ルールの徹底を求める。日本の消費者は、それが当たり前だろうと感じるに違いない。しかし、これが世界の中ではあまりに厳しいものであるため、それに対応しようとすると、採算が合わなくなるほどの手間がかかる。先ほども述べたとおり、Annesha Style社は名立たる欧米企業が認めている品質を有している。それでも、日本企業が求める品質管理を実施することは大変な労力と時間を要してしまうのである。
日本の特殊事情はほかにもある。製品そのものの仕様も、日本企業は、欧米企業とは異なるものを求める。日本には四季があり、春物や秋物という中間季節の需要が存在するわけだが、そういう日本独自の事情による仕様が存在するというのもその一例である。
また、オーダーのロットも欧米企業より細かく小さい。例えば、欧米企業であれば同一仕様のニットを数万枚単位でオーダーするところを、日本企業は同一仕様のニットを数千枚程度とし、これを複数仕様でオーダーする。日本企業にとっては、売れなかった場合のリスクや品ぞろえという観点から、こういった小ロット・短サイクルのオーダーをしているわけだが、受注側としては、欧米企業のオーダーに比べ、煩わしいことは否めない。
日本企業が中国に生産拠点を求めて行ったときには、こうした日本の特殊な事情や要求を中国企業に求め、時間をかけて浸透させていった。日本企業としては、同様のことをバングラデシュ企業に求めているわけであるが、バングラデシュ企業はここに難しさを感じているのである。
すなわち、バングラデシュ企業は、積極的にいますぐ日本とビジネスをしたいとは考えていない。Ashek氏の“slowly”という言葉が象徴するように、“いつか”、“そのうちに”、日本とビジネスができたらいいが、今、性急に動く必要性はない。むしろ、日本とのビジネスは、企業の成長にとって阻害要因になりかねないから、しばらくは避けておきたいという雰囲気すらある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授