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» 2010年12月07日 08時00分 公開

ITmedia エグゼクティブセミナーリポート:いま日本企業が目指すべき学習優位の戦略論――一橋大学の名和教授 (3/4)

[宍戸周夫,ITmedia]

事業開発のプロセスを考え直す

 しかし問題は、それをどのように実現するか、それを企業の中にどのように仕組みとして作るかだ。実は、それが本講演の主題でもある。

 そこで名和氏は、これまでの事業開発のプロセスを図の9つのボックスで示した。縦軸は空間軸(エコシステム)で、市場空間に登場する顧客と企業、そしてその間でやりとりされる商品やサービス。つまり、需要と供給、そしてその間の商品・サービスである。

一方の横軸は時間軸(バリューチェーン)で、商品やサービスを着想(Define)し、それを構築(Develop)し、実際に提供(Deliver)していくという流れになる。

通常の事業開発プロセス

 「このような開発プロセスの中で、多くの事業開発は商品・サービスだけを考えて、一気呵成に横軸で動いてしまう傾向があった。いわゆるプロダクトアウトであるが、さすがに最近これは減ってきている。これに代わって、顧客や自社のパワーなどを考えて商品・サービスを開発する手法(開発マニアック)も増えてきているが、しかしこれでできたものも割と陳腐なものしかない。

 一方、イノベーションを継続的に生みだしている企業の組織活動を深く検証したところ、従来のプロダクトアウトや開発マニアックが着目した部分以外の資産を活用していることが分かった」

「イノベーションの<4+1>Box」

 このように語り、名和氏は「イノベーションの<4+1>Box」を示した。

 この図の4+1のボックスのうち、もっとも分かりやすいのは、図の右上の「顧客接点」だという。「ここには宝の山がある。顧客はなぜ買わなかったのか、また商品やサービスを提供した後の顧客の声、特にクレームは次の着想につながるものだ。そして、想定とは違った使い方をしている顧客の声も次の商品開発のヒントになる」

 次に着目すべきは左下の「組織DNA」だという。新たな商品やサービスを着想するときに、自社の強みは何かということを考えるというボックスだ。

 しかしこの部分は、企業そのものは分かっていないことが以外と多い。その会社の体臭というような特徴は、第三者が見るとよく分かるケースがあるようだ。しかし自社の本質的な強みをしっかり知るということは、事業開発のプロセスにおいて非常に大切である。

 次に左上の「顧客洞察」の部分に移るが、この部分はここまでの2つ、つまり「顧客接点」と「組織DNA」をやっていると答えは自ずと出るという。

 「お客様は商品やサービスを購入しどのような使い方をしているのか、そこにあるお客様の困りごとや中途半端な喜びを見たとき、自社の「組織DNA」によってお客様に対してもう一度驚きを提供するかを考え抜くことが、ここでいう自社ならではの顧客価値の発見に直結する」

 そして、日本企業はその「顧客洞察」のプロセスから右下の「事業現場」に行くことが多いという。ここは日本の企業が一番得意な分野だからだ。

 しかし名和氏は、「そこで大事なのは真ん中の「成長エンジン」の部分である」という。

 「ここは、大きくスケールを取り得るビジネスモデルの作り込みの部分である。ここで重要なのは、どのようにしてスケール、つまり規模を取るかということ。そうしないと、そのモデルがいかにいいものであってもニッチな、一発勝負のものとなってしまう。できるだけスケールさせる仕組みを事業モデルとしてビルトインしなければならない。その際のポイントは、多重化させるための事業のプラットフォーム(基盤)をいかに仕組むかといくことと、他のプレーヤーにそのプラットフォームを活用して事業展開をさせることで、いかに他社の資産をレベレッジ(活用)する仕掛けを作るかの2点である」

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