しかし、多くの会社はこうした動きでなく、違った動き方をしているようだ。
例えば、市場開拓型といわれる会社は独自の動き方をしているという。「多くのベンチャー企業、昔のソニーやアップルなどは市場開拓型の会社といえる。「顧客洞察」と「組織DNA」だけに力を入れている会社である」、さらには、P&Gに代表される市場深耕型の会社がある。マーケットを常に見て、それに対するものが自社になかったら外から買ってくれば良いという会社で、「顧客洞察」と「顧客接点」の2つだけに力を入れている。
資産深耕型の会社ではかつてのNTTや東京電力などが上げられる。
「資産の上で殿様商売をしているような企業で、お客様がなんといおうと自分のものしか手に入らないのだという会社。“組織DNA”と“事業現場”の2つに力を入れている」
そして、右の「顧客接点」と「事業現場」の間をクルクルと回っているような会社がある。現場深耕型の企業で、カイゼンを得意技とする平時のトヨタがその代表だ。
「このように、<4+1>Boxの4つの隅をうまく使わずに、偏った動き方をしている企業が多い。そうではなくて、しっかりと4つの隅を使うようにしなければならない。それも「顧客接点」を出発点として、「組織DNA」、「顧客洞察」、「事業現場」へ移行するという動きで、それを何度も繰り返す必要がある」
名和氏は講演の最後に、パナソニックが2000年から取り組んだ、いわゆる「中村改革」の成功の要因を紹介した。
この中村改革は、2000年6月に松下電器産業(当時)の社長に就任した中村邦夫氏が「破壊と創造」を旗印に取り組んだ構造改革。当時、パナソニックは厳しい状況にあったが、そこでパナソニックの「事業の型」を改めて検討することにした。
「中村改革までのパナソニックは典型的なプロダクトアウトの会社だった。もともと各事業部の力が強かった会社だが、そこで中村さんが最初にやったのは、マーケティング本部にすべてのパワーを集中させたこと。つまり、会社のパワーをさきほどの図の右上のボックスに持っていってしまった」
マーケティング本部はそれまで、製品を量販店や自社のチェーン店に届けるといったコストセンターでしかなかった。しかしそこにP/L責任を持たせ、商品の価格や在庫などすべての責任も持たせることになった。そのためマーケティング本部は、本気で、売れるものしか事業として扱わないようになった。
「これによって、各事業部が新しい製品を作ったから売ってくれといっても、マーケティング本部が売れないと判断したらNOということになった」という。
さらに取り組んだのが、図の左下の「組織DNA」への取り組みである。ここで“技術の棚卸し”を行い、パナソニックの強みはデジアナの変換にあるとして、デジカメなどでヒット商品を次々と生み出したという。
日本企業が目指すのはスマート×リーンであり、それを実現するのは事業開発の<4+1>Boxを繰り返し検証することが重要という指摘だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授