利用用途に関する結果を図6に示した。最も高い割合となったのは、「メールやスケジュール管理」と「電子カタログ/プレゼンテーション端末」の58.8%。次いで「文書/コンテンツ閲覧端末」(50.3%)、「モバイルPCの代替機」と「経営ダッシュボード用端末」(ともに15.8%)、「ハンドヘルド専用端末の代替機」の順となった。この結果から導入または導入予定企業では、iPadやタブレット端末を主に情報閲覧または社外でのコミュニケーション端末の用途で利用しようと考えているようだ。ただし、「モバイルPCの代替機」も5割程度の割合であることから、一部の業務アプリケーションを動作させる端末としての用途もあると推測する。
図7は、導入する機種のOSの種類を問うた結果である。最も割合が高いのは「iOS(iPad)」の87.3%で、「Google Android」(43%)、「Windows7(スレートPC)」(30.3%)、「Linux」(8.5%)が続いた。上位3種類では、現在のタブレット端末に対するブームを作り出したといえるiOSが大きくリードしているが、各OSを搭載したデバイスの出荷時期の順に割合が高いともいえるので、今後、端末の出荷状況や提供される機能やサービス内容によっては、上位3種類のOSでの競争が激化する可能性もある。
過去に、OSS(オープンソース)であり、サーバ用のOSでは一定のシェアを得たことから、Windowsに対抗する端末用のOSとして期待されたLinuxであるが、タブレット端末の領域では上位3種類のOSとの差が大きく、端末ベンダーやアプリケーション提供者が自由に利用できるというOSSとしての利点も、Androidにとって代わられた状況にある。
業種別および従業員規模別で見ても、iOSの割合が高いことに変わりはないが、「製造・建設業」あるいは従業員数が「5001人」以上の大規模企業では、Windows7が2位となっている。これらの企業では、既に多くのWindows PCが導入されており、またWindows用の周辺機器や独自開発アプリケーションを多く利用しているため、既存の環境との互換性を重視しているのではないかと考えられる。
以下は、図3にて「導入計画はない」および「検討していない」と回答したグループに、回答理由を問うた結果である。最も割合が高かったのは、「新たな初期コストがかかる」の50%で、次いで、「費用対効果が不明である」(47%)、「具体的な用途が分からない」(40.3%)と、費用とその効果や用途が明確でないという理由が挙がった。
さらに、3割程度の割合となった項目としては、「PCで十分であると考えている」(30.6%)、「セキュリティに不安がある」(29.9%)、「既存システムとの連携がとりにくい」および「事例が少なく時期尚早」(29.1%)、「運用管理が煩雑になる」(26.9%)と、既存環境と異なることに対する懸念や不安に関するものが多かった。
これらの結果から、クライアント・デバイスでは、台数削減によるコスト削減が難しく、処理能力や使い勝手の向上によって得られる生産性向上を数値化することの難しさが、導入を躊躇させる大きな理由となっていることが分かる。個人と異なり企業での導入では、単にブームだから、先進的なイメージが得られるから、といった理由では、部分的またはテストでの導入は行っても、全社的な導入には至らないと考えられる。ベンダーは今後、より具体的な利点を訴求する必要に迫られるだろう。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授