職場での争いが大きな問題であることは間違いありません。調査によると、管理者は週の多くの時間を費やして従業員同士の個人的争いに対応しています。同時に、従業員は正常に機能しない仕事環境に関連したストレス系の健康問題を治すのに、より多くのお金を費やしています。米国経営管理学会によると、従業員は労働時間の4分の1、あるいは1日の約2時間を仕事仲間との些細な争いに費やしていることが分かりました。
厳しい経済状況、コミュニケーションから人間らしさを無くすテクノロジー、そして従業員の新世代の出現などはすべて、職場のネガティブな感情や対立が増えている原因です。しかし、突き詰めると、職場の争いは、幼少期の育ちの中で身に着く行動パターンや心理的影響に由来します。
比較的健全な家族の中でも、家族のメンバーは「良い子」、「賢い子」、あるいは「怠け者」など特定の目に見えない役割を担っています。そして、人は自分の家族内での役割にある一定の心地よさを感じ、その行動パターンを(特に破壊的なパターンを)職場に持ち込みます。例えば、貧しい子ども時代をずっと引きずっていた元CEOのデニス・コズロウスキーは、ぜい沢な生活をするために会社から大金を盗み、最終的に子ども時代と同じ、一文無しになってしまいました。
コズロウスキーの例は極端ですが、子ども時代からの行動パターンは、仕事をしている時にも現れます。危機的状況における強い感情的反応は、家系と根源的な生存本能に起因します。一般的な職場では感情表現が抑制されることから、従業員はよく自分の考えや感情を押し殺します。しかし、組織は、次のように破壊的パターンを抑制する環境を作ることができます。
破壊的パターンを抑制する環境を作る!
・バランスを取らせる
ルールは必要なものです。しかし、あまりにも厳しく管理された環境は、創造力を押し殺し、自発性を抑制してしまいます。その反対に、自由過ぎる環境は混乱と不安を呼びます。従業員に質問し意思決定を下す自由を与え、それと同時に自分の行動に責任を取らせるようにしましょう。
・表現を促す
従業員は大抵、反抗者や弱者だとレッテルを貼られるのを恐れ、不快感や失望感を表現しません。その結果、問題を隠し、すべてがうまくいっているふりをします。反対に、常に劇的な出来事に巻き込まれている職場は、仕事よりも混乱や騒ぎが優先されてしまいます。非難することなく正直に感情を表現するよう促し、問題が悪化するのを食い止めて下さい。
・ストレスを解消する
感情パターンは多くの場合、極めて強い不安を覚えた時に表面化します。厳しい経済状態、レイオフ、高い失業率などは怒りや不合理な考えのきっかけになります。組織は、ストレス管理や健康維持、運動などのプログラムを提供することで、従業員が不安に対処する手助けをすることができます。また、経済的問題の対処法の講義をお昼休みに提供することも、従業員のためになります。
・コミュニケーションを促す
感情のパターンやその影響を従業員に教えることで、自由な会話を促進して下さい。危機的状況を避けるには、コミュニケーションスキルやフィードバックスキルを教えるワークショップを定期的に開いて下さい。
企業内における従業員同士の摩擦は企業に大きな損害を与えていることがここから分かります。
各従業員が就業時間の20%をそのような争い事に費やしているということは非効率甚だしい問題ですし、それらが自分の生い立ちから発生する感情に準じた行動であるとなれば、従業員の企業へ対する考え方を疑わざるをえないという気もします。一種の帰属意識がそのようにさせているのかもしれません。逆を返せばその帰属意識をプラスの方向に展開させることで解決の道はあるのかもしれません。ここでは壊滅を防止する4つの策が言及されていますが、それをうまく発展させていく方法はないのでしょうか?
企業は一般的に、職場の争いを解決しようとありきたりな道をたどります。上司や人事部は、争いの当事者に「業績向上プラン」の一環としてカウンセリングやコーチングを提供します。しかし、もし好ましくない行動が変わらない場合、結果として次の3つの状況が生まれることが考えられます。
(1)上司が問題をうやむやにする。
(2)問題のある従業員が別の部署でも問題を起こす。
(3)会社が当事者を懲戒免職処分にする。
このような上司や人事部による介入は広く行われていますが、残念なことに、この手法は大きく失敗します。なぜなら、これは、争いの根底にある「システムパターン」ではなく表面上の問題に焦点を当てているからです。また、人事部の手法も、「トラブルメーカー」を更生させるために考えられたものであるため、十分ではありません。この手法では短期的な結果を達成することはできるかもしれませんが、問題は必ずまた現れますし、人事部の介入が無駄に繰り返されることになります。
上司の善意ある行為に関係なく、最初に破壊的行動の原因となった問題に対処しない限り、職場の争いを解決する事はできません。組織は深く染みついた家族パターンと職場での人間関係の間にある繋がりを認識しなければなりません。そして、誠実でオープンな意志疎通を育てる環境を構築しなければなりません。真実は時にはつらいものかもしれませんが、真実だけが問題を解決する力を持っています。
何かトラブルがあったときに企業は改善のための教育を施したり、最悪は解雇という措置で対応しますが、それでは根本的な解決になりません。それぞれの人がつながりを持ち、相手を理解できる環境をつくることが大切です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授