オフィスで日々使う文房具やOA用品から工場や研究所などで必要とされる工具・理化学用品などのいわゆる「間接材」にも着目、「明日来る」を掲げてワン・ストップ・ショッピングを実現させたのがアスクルだ。創業以来一貫して同社をリードし、イノベーションを意識的に生みだしている岩田社長が、「進化し続けるための条件」を話す。
アスクルは、大手文具・オフィス家具メーカーであるプラスの中に生まれた新事業部門「アスクル事業推進室」を母体とする。岩田彰一郎氏は、1992年に同室長に就任して以来(97年の分社独立時にアスクル社長に就任)、まずは強靭なビジネスモデルを構築することに力を注いだ。岩田氏の言葉でいう「勝てる構造」だ。
アスクルは、大手文具・オフィス家具メーカーであるプラスの中に生まれた新事業部門「アスクル事業推進室」を母体とする。岩田氏は、1992年に同室長に就任して以来(97年の分社独立時にアスクル社長に就任)、まずは強靭なビジネスモデルを構築することに力を注いだ。岩田氏の言葉でいう「勝てる構造」だ。
1992年にオフィス用通販サービスが稼働するが、当初は中小事業所向けに自社製品だけを売っていた。しかし、顧客からは「プラス以外の他社商品も扱ってほしい」「価格をもっと安く」という要望が多く寄せられた。そこで、当時のプラス社長(今泉嘉久氏、現会長)の後押しをうけ、「われわれは、お客様が望むものを、お客様が望む値段で売ろう」と決断する。
「社内からすると、ライバルの商品を売るというのはとんでもないものだし、業界からすると、メーカーの流通部門が自ら値段を下げるとは何事だ、とずいぶんお叱りをうけたが、お客様からすれば当たり前のこと。これがブレークスルーとなって、アスクル事業は急成長を始めた。97年に分社したときに、企業理念を“お客様のために進化する”と定めた」(岩田氏)
以来、「お客様に教えられることは正しい」という信念がアスクルの「遺伝子」になり、イノベーションの起点になっていると岩田氏は話す。顧客の声に導かれて、カタログ掲載商品もオフィスサプライからコーヒー、水など、次々に広がっていく。さらに、狭義の「オフィス」だけでなく、工場やレストラン、病院、大学の研究室などへも顧客ベースが広がった。最近ではそうした横展開のみならず、新たなプラットフォーム「SOLOEL(ソロエル)」を通じて大企業へ、また「アスマル」という新事業を通じてコンシューマーへと、縦方向への拡大も始まっている。
アスクルは、3月11日の東日本大震災で、東京都江東区辰巳の物流倉庫の中にあった本社設備が破損。従業員の安全を確保するために、9月末に東京都江東区豊洲の豊洲キュービックガーデン11階・12階に本社を移転した。
新オフィスは以前の本社と同様、壁がほとんどないオープンでフラットな空間だ。ここに、正社員約500人とパートナー企業等から来ているスタッフ約800人、合わせて約1300人あまりが分け隔てなく働いている。
正社員約500人を岩田氏は「小アスクル」と呼び、本社オフィスで一緒に働く、パートナー企業からのスタッフや、デザイナーなどのプロフェッショナル、配送会社のスタッフ、商品サプライヤー、さらには顧客まで含めた関係者全体を「大アスクル」と呼ぶ。このモデルの骨格は、創業当初から変わっていない。
「関係者は皆、平等だけれども、この“大アスクル”は仲良しクラブではなく、“社会最適”だと思っている。参加する人達がきちんとそれぞれの機能を果たしているから最適であって、機能がないのに組んでしまうと“不適”な構造になってしまう」(岩田氏)
この新オフィスに移ったときに、全ての執行役員の担当替えも行われた。「経営管理担当役員が商品部のトップに行ったり、商品部のトップが物流に行ったり。それがいい刺激になっている」。
以前の本社は、中央にお問い合わせセンターを据え、上下階を吹き抜けの螺旋階段で繋ぐ独特の構造だったが、新本社では物理的に風穴をあけるのではなく、組織の風通しを良くした、というわけだ。これも、イノベーションを起こしやすくするためのひとつの仕掛けだ。
「震災に遭った後に最初に作った標語が、“元に戻すのではなくて、その先に行こう”というもの。機能的に元に戻るというのがわれわれの復活ではない、もっといい会社に変わろうというのが、皆に共通する思いだった」と岩田氏は言う。
オープンでフラットなオフィスに加え、社内コミュニケーションの強化に役立っているのが、年2回実施しているカタログ制作のための「MD(マーチャンダイザー)合宿」である。
「最近もMDを中心に約300人が3日間カンヅメで、“来年の春は、お客様はどんな気持ちで、何を求めているのだろう”ということを議論した。これが会社全体の共有知を形作り、コミュニケーションを深化させていく」(岩田氏)
アスクルは創業のころから、10年くらい先を見通した予測を基に、長期の経営戦略を構想している。それら予測を踏まえた2006年の会社資料には、2011年の社会・経済像が未来像として描かれている。そこに、「前提」としておかれているのは次の5つだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授