儲けたいなら2番手になれ海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

» 2011年11月16日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
エグゼクティブブックサマリー

急進的イノベーション

 急進的イノベーションが市場に参入すると、市場は混乱し、「価値連鎖」が広まります。顧客はこのイノベーションにどう対処すべきか考えなければなりません。競合相手はこのイノベーションが本当の変化なのか、それともただの一時的なものなのか、それに順応するためにいつどうやって変わるべきか、そしてこの変化にはコストはいくらかかるのか、見極める必要があります。

 また、急進的イノベーションはただ新しい市場を作るだけではありません。新しい種類の問題を生み出します。だから、この変化によってどこへ導かれるのか、そしてそれのためにどうやって計画を立てればよいのかはっきりと分からないのです。

 急進的イノベーションは消費者の需要から生まれるのではありません。存在していることをも、知らない物を、どのようにして欲しがることができるでしょう?

 消費者需要は一般的なイノベーションを促進したり、調査事項を定めたり、資金供給を促したり、優先順位を明確にしたり、あるいは市場カテゴリーを作ったりすることができるかもしれませんが、最終的に急進的イノベーションを生み出すのは製品です。例えば、研究機関と軍隊は最初のウェブ・ネットワークを作りましたが、彼らはインターネットがもたらす変化を理解していませんでした。

 このような「供給主導型」のイノベーションの予測は困難です。実際、大発見の多くは、他の調査から生まれた予想外の副産物です。まず、特定の結果を意識的に探す代わりに、研究組織が全体のパラダイムに反する特定の問題に取り組みます。そして大発見が起こり、それから利益を得ようと人々が急ぐことである種の「ゴールドラッシュ」が生まれます。これによって「需要主導型」市場とは全く異なる状況が作り出されます。

 需要主導型市場とは、その中にいる消費者が、自分が何を求め、何を必要としているのかはっきりと分かっている市場を指します。このような市場に労力を注ぐ事もできますが、供給主導型の状況は隙間市場を生み出します。そこでは特殊なユーザー(初期利用者、お金持ち、専門家)だけが新しい製品を利用します。

 本質的に、人は供給主導型市場がどこへ向かうのか予想しようとします。しかし、新しい理論的大発明をテクノロジーに変えることは難しい事であり、そのような仮説上のテクノロジーがどのように消費者の要望に沿うか予測することは更に困難なことです。そのため、新しいイノベーションが生まれると、沢山の企業がその分野に駆け込むのです。

 実際、1000社以上の企業が米国の自動車市場で運だめしを行いました。その大部分が1885年から1920年の間に参入しました。彼らのような初期のメーカー達は三輪自動車など幅広い種類の自動車を提供しましたが、やがて姿を消していきました。

 市場の最初の段階では、競合する企業は互いから学び、突然の変化の前では何が最も効果的か探ろうとします。そのため、企業は立ち上げられても、すぐに失敗します。人々が突然不明瞭な可能性を認識する「情報カスケード」が発生すると、市場への駆け込みが後押しされます。自称・先見の明を持った人間がその可能性を誇張することがありますが、そのリスクを理解していません。

そして、ほとんどの人が先人の神話を信じ、大規模投資をすることで競争力のあるインフラを構築しようとし、その結果、駆け込みが起こります。このようなパターンは90年代のインターネット・ブームでも起こりました。

 新しい市場に参入する企業は、経験からチャンスを感じることのできる「水平に繋がった市場」、あるいは供給ラインから技術支援スタッフまで全て揃った「垂直に繋がった市場」のどちらかから参入します。しかし、ほとんどの新規参入企業は、その市場を強化する段階ですぐに失敗し、その分野を離れます。この流れには「支配的設計」が関係しています。支配的設計とはマスマーケティングを可能にし、作り出すものです。

 支配的設計は、市場が製品には何ができるか学び、共通する定義を決めることで生まれます。このパラメーターは「プラットフォーム」を生み出し、生産者はそれを他のイノベーションの基盤として使うことができます。また、競い合う設計は、もし消費者リスクが低く信頼できる機能を持ち、十分な支援を受け価格が低ければ、両方とも支配的設計になることができます。

 さらに、設計案はさまざまな消費者に対応するものでなければならないため、生産者はその案の確立に資金をつぎ込む必要があります。しかし、もし支配的設計を最初に確立させることができたら、市場をコントロールできる位置に着くことができます。1番になることで学習曲線と規模の経済を有効利用し、ブランドを構築することができます。ただし、こういったメリットは販売するための製品を最初に提供することによって生まれるのではありません。マスマーケットの調査に最初に成功することによって生まれるのです。

 つまり急進的なイノベーションとはある意味偶然性がもたらされる産物であり、今の市場を壊す危険なものなのかも知れません。むしろ、どのようにそれを仕掛けるのか? ということがひとつの急進性……ここでは顧客ニーズから生まれるものではないとされていますが、顧客を先導してニーズを喚起することがそれに当たると考えられはしないでしょうか? 特に90年代以降のネットの出現から始まり現代のソーシャルメディアの活用によって、そうした急進的イノベーションは発生のチャンスがさらに広がったと考えられると思います。

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