「気づき」の多い組織から豊富なアイデアが生まれる。ただ聞いているだけでは気づきは生まれない。価値観を理解するための推論が必要だ。
皆さんは考えたことがないでしょうか? 例えば、自分の目の前にあるブルーの色が、他の人も同じブルーに見えるかどうかということを。本当に同じ色に見えているかどうかは検証のしようがありません。けれども、同じ物事に対して、他の人がまったく別の見方をしていることに気づいた経験は誰にでもあるはずです。
例えば、中途入社の人や社外の人など、自分たちとは別の価値観を持った人が話すのを聞いて、「へー、そういう見方もあるんだ」と驚いたことがあるのではないかと思います。その観点の違いが、「気づき」を起こすきっかけとなります。
気づきは発想の転換を促します。そのため、気づきの多い組織は、創造的なアイデアが生まれるチャンスが豊富な組織といってよいでしょう。
物事が相手の価値観のレンズを通して、相手にとってどう映っているかは、論理的に考えただけでは分かりません。そのため、それを知るには、「推論」が必要になります。その推論による理解とは、「あー、そうだったのか」という「ひらめき」のような感覚です。
論理的な思考といえば、帰納法や演繹法が思い浮かぶでしょう。帰納法とは、複数の情報の中から共通項を見つける思考法です。演繹法とは、異なる情報の因果関係を見つける思考法です。どちらも、既に存在する事実情報を繋げて、何かの法則を説明するためのものです。しかしそうした思考のみからでは、相手の未知なる価値観は理解できません。
次の会話を見てください。部長と課長が、部内の問題点について話しています。
部長:「君の課では、今、何が問題なのか?」
課長:「仕事がたくさんあるのは良いことなのですが、業務量が増えて、新しいことを考える余裕がなくなっているのが悩ましい問題です」
部長:「業務量はどの程度、増えたのか?」
課長:「そうですね。昨年より2割くらいは増えていると思います」
部長:「よし。それでは、仕事の効率化をテーマに考えよう」
部長は、「業務量が増えているから余裕がなくなっている」という因果関係に着目しています。そこに意識が向くと、問題を解決するための答えを探しに行ってしまいます。余裕を生み出すためには、業務量を減らさなければならない。だから効率化しよう、といった具合です。そのコミュニケーションから、部下の価値観にたどり着くことはできません。そのため、気づきも起こりません。
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明治学院大学 経済学部准教授