常に顧客の高い要求に応えなくてはならないホテル業界で、斬新なサービスを提供し続けることで顧客の心をつかむ。
旅行に持っていくものを1つだけ選ぶとすると? の質問に「ホテルの会員特典」と答えた人が73%で、残念なことに妻や夫の15%を上回っています。
このユニークな調査は、年間で25回以上の旅行をする世界9900人(うち日本人は1560人)を対象に今年1月に行なわれたもので、調査を行ったスターウッド ホテル&リゾート ワールドワイドは、世界100カ国でおよそ1090以上のホテル、リゾートを所有、運営し、従業員数15万4000人を誇るホテル・レジャーのトップ企業です。
今回は、 レジャー、法人、卸売と多岐にわたる異なる営業方法やグローバルなホテル産業に求められるインバウンド(国内ビジネス送客)やアウトバウンド(海外への送客)などにも精通した、ホテル業界において22年以上のキャリアを持つ、日本スターウッド・ホテルのセールスオーガニゼーション本部長の矢島隆彦さんに、同社がいかに顧客ニーズを掘り起こし対応しているかについて尋ねました。
まず、スターウッドの歴史を見ると、同社が時代のニーズに的確に対応し、事業を拡大してきたかがよく分かります。不動産投資会社として事業を開始した当時、約30のホテルを所有していた同社の時価総額は1000万ドル、1995年にニューヨーク証券取引所に上場していたインベスターズトラストを皮切りに、ウェスティン、シェラトンを買収、瞬く間にホスピタリティ産業の雄となり、現在の時価総額は160億ドルを数えます。
ホテル産業をおおまかに分けると、宿泊から食事、滞在に必要なすべてを提供してくれるフルサービスのホテルブランドと、限定されたサービスを提供するセレクトサービスのホテルブランドがあります。スターウッドは、シェラトンやウェスティンなど9つのブランドを所有しておりそのほとんどがフルサービス、ラグジュアリサービスに属します。競合として挙げられるのはマリオット(リッツカールトン含む)、ハイアット、ヒルトン、フォーシーズンズなどのホテルグループです。
これらフルサービスホテルブランドに重要なのは、当然ブランディングですが、広告やコマーシャルで簡単に差別化できるものではありません。スターウッドを含む外資系のホテルグループ各社がブランディングを行うなかで、スターウッドがさらにとった戦略は、顧客ニーズをサービスに反映させることです。言い換えれば、サービスのパーソナライゼーションで、既存顧客の中でも優良顧客のLTV(Life Time Value)を伸ばす取り組みをしました。
ここで思い起こされるのがパレートの法則で、全体の数値の大部分は一部の要素が生み出しているというものです。つまり収益を生み出す優良顧客に戦略を集中するのは良策だといえます。同社の調査では、全体収益の3割を占めるのが2%の優良顧客であるというから驚きです。そして、これら優良顧客向けに作られたのが「Starwood Preferred Guest(スターウッド プリファード ゲスト、以下SPG)」プログラムです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授