今度は、表2を見てください。こちらは、CIOが優先すべきテクノロジに関するランキング表です。第1位は、「アナリティクスとビジネス・インテリジェンス」です。よくみると、この項目は、2008年〜2009年にかけても第1位になっています。しかし、実は、2008年、2009年当時、「アナリティクス」は入っていませんでした。
ここで、簡単にアナリティクスとビジネス・インテリジェンス(以下BI)の違いを説明しなければなりません。
従来のBIは、企業業績を、出荷伝票や入庫伝票、会計伝票など素データにまでさかのぼって分析し、過去に起きたビジネスを正確に把握するためのツールでした。経営者向けのダッシュボードやコックピットと呼ばれるようなツールは、これらの「過去に起きた状況を一覧性を高めて表示する」BIの一機能だったのです。
一方、アナリティクスはあくまでも将来を予測するための分析です。例えば、当社のお店には何時から何時までの来店客数が多いか、それは季節や曜日や天気によって傾向が変化するのか。はたまた、チラシの効果による集客性はどの程度向上するのか、など、既存の基幹システムでは取り扱わなかったデータや情報を元に、将来のビジネスを予測するための分析を行うのです。
これらの分析には、大量のデータが必要になり、そのデータにアクセスするためのさまざまな道具が必要になるため、ITベンダーサイドでは、特に「ビッグデータ」と称しています。
これが、テクノロジの優先順位で第1位だというのです。競合他社に先駆けて、分析結果を出し、「いち早く行動する」ことがビジネス成長の加速に貢献するのだと世界中のCIOは考えています。
第2位は、モバイル・テクノロジがランクインしました。モバイルは、スマートフォンや、タブレットに代表される機器を中心にさらなる発展が期待される領域です。既に、スマートフォンなどの携帯電話では実際にビジネスが行われているものもありますが、内蔵されたGPSによって、その端末を持った人がどこにいるかを察知して、その場所に応じたサービスをメールなどを介して提供するものもあります。
また、スマートフォンには加速度センサーが付いているものも結構あるので、それを利用して万歩計機能を付けたり、さらにGPSと組み合わせることにより、適切な運動量を提案したりするアプリケーションも考えられています。タブレット端末を営業員に配布して、いつでもどこでもプレゼンテーションできますとか、紙のパンフレットを配布するのではなく画面を見せて効果的な説明をといった利用からは、さらにテクノロジを利活用しようとする試みに見えます。
ここでのテクノロジは、センサーです。モバイルテクノロジをビジネスに利用するためのキーワードは小型・軽量・携帯性能ではなく、内蔵センサーにどのようなものがあり、そのセンサーにより、人々の何が分かるのか? そのことで、当社のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを分析する能力が重要なのです。前述したアナリティクスは、これらモバイルテクノロジから得られる情報を取得して分析することも含まれています。
第3位は、クラウドコンピューティングでした。ここでは、単純なソーシング先としてのテクノロジとして理解しないことが肝要です。クラウド型にして、社外の誰とつながりたいのかを考えるのです。すべて自社内に閉じたシステムであれば、このシステムを用いて社外の顧客、ベンダーとつながることは難しくなります。社外の人に社内のシステムにアクセスさせる必要があるからです。
しかし、社外に置くクラウドシステムの場合は、社外の人にも社内にもアクセスさせることは容易になります。もともと自社内に存在するものではないからです。また、いち早く行動する能力という意味でもクラウドは長けています。SaaS、PaaSなど必要な機能は既に準備されているサービスだからです。
企業成長を加速するために、さまざまなデータや情報を分析し、誰よりも早く変化を察知し、行動するためにクラウドコンピューティングは見逃せないテクノロジなのです。
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明治学院大学 経済学部准教授