そこでオススメするのが、「未来から現在を眺める」という方法です。イメージの中で未来までタイムスリップし、「望ましい未来から現在を眺めたら、この苦しい体験にはどんな意味や価値があるのか」を考えてみるのです。
こんな問いを自分自身に投げかけてみてください。
「近い未来から現在を眺めたら、『この体験のおかげで』どうなっているだろう? 何に生かせているだろう?」
これは、「時間経過は出来事の意味を肯定的に変えてくれる」ことを知っているからこそできる見方です。すでに起こってしまった出来事を変えることはできません。しかし、起こっている出来事の解釈(物事の見方)を変化させる能力があれば、体験を価値あるものにできるのです。
33歳で起業してから、私にもいくつかの危機的な状況がありました。例えば「お金が底をつきそうになる」とか。そんなときは私だって、「あのとき、起業を選択せず我慢してサラリーマンを続けていれば……」と過去の選択を悔やみたくなります。過去を振り返って現実が変わればいいのですが、悲しいかな、現実は何も変わらないのですよね。この苦しさをどうにか乗り越えていくしかない。
そこで、視点を過去から未来に移して「この体験のおかげで」を考えるようにしています。「いつかこの苦しさを講演のネタにしてやろう」とか、「この体験を本にして売ろう」とか。もちろん、未来が本当にそうなるかは分かりませんが、視点を未来にずらすことで、多少なりとも明るい未来が拓け、目の前の苦しさから抜け出す1歩を歩ませてくれています。
最近ではこれまでのいろんな苦しさのおかげで抵抗力がついて、「今回もなんとかなるさ」と物事を楽観的に捉えられるようになってきました。
私たちは毎日たくさんの選択を繰り返しています。今、ここにあるのはその結果です。現在が望んでいる姿とかけ離れていると、過去を振り返り、選択のミスを嘆きたくなることもあるでしょう。
けれども、よく思い出してください。その時その時の選択は「常にベスト」だったはずです。
過去を振り返りたくなったら、未来から現在を眺めてください。時間の経過が、現在のその体験をきっと価値あるものに変えてくれるでしょう。
NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。自動車メーカー、ソフトウエア開発会社を経て、現職。プレッシャーの多い職場で自身が精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。コーチングや心理学の手法を実践しチーム変革に成功。難しいコミュニケーションスキルを誰もが使えるようにした「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。思考法やコミュニケーションをテーマとした研修・セミナー・講演・執筆活動を行う。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。
連載記事「人生はサーフィンのように」をeBook(電子書籍)にまとめた「やる気が出ない本当の理由」を発売。詳細はこちら。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授