経営者や企業人は正しい「マネジメント」を必死に学ぶべきだ。企業の社会における立ち位置の重要性を改めて強く認識し、実行すべきである。
東京電力が先日、社内の福島原子力事故調査委員会「最終報告書」を公表したが、その内容について広く世間の批判を呼んでいる。不思議なことに、世間や関係者は、いかにも予想外の内容だといわんばかりである。しかし、筆者は東京電力の姿勢をよく理解できる。
ナニ? 世間の批判を浴びている東電の姿勢を理解できる? 穏やかでないと思われるかもしれないが、先を読んでもらいたい。
まず、東電の「報告」公表概要を整理してみる(NHK NEWS WEB 2012.6.25、及び YOMIURI ONLINE 2012.6.21.より引用し、若干加筆)。
1、総括、結論
(1)原子力災害への備えが甘く、実践的な考えが十分でなかった。
(2)事故の原因について、「津波想定は結果的に甘さがあったと言わざるをえず、津波に対抗する備えが不十分であったことが今回の事故の根本的な原因」と結論付けた。
2、自己評価
(1)事故対応は、想定を超えた中で現場は必死に対処し、基本的に妥当だったと評価した。
(2) '08に最大15.7メートルの津波を試算したが、「仮の試算」のため設備対策を講じなかった。
(3)「結果的に炉心損傷を防止することができず、大変申し訳ない」と陳謝しながらも、「史上まれに見る大きな津波だった」「まさに知見を超えた巨大津波だった」とした。
3、政府などを批判
(1)政府の介入については、指示が現場の実態とかけ離れた形で直接・間接に行われ、「対応に当たる発電所々長が板挟みになるばかりで、事故の収束の結果を改善するものではなかった」、「無用の混乱を助長させ、関係者は大いに反省すべきである」と批判した。
(2)不十分だった住民への情報発信についても、爆発した1号機の写真を無断公表したとして官邸から注意されて以降、許可なく発表できなくなったと官邸責任に言及。3号機の格納容器圧力が上昇した3/14には、官邸の了解が得られず公表が遅れたとした。
さて、次に比較のため、最近起こった企業不祥事であるAIJ投資顧問、オリンパス、大王製紙の事件それぞれの経営者の姿勢について、若干整理してみよう。
まず、AIJである(毎日新聞 2012.4.18.)。浅川和彦社長は4/27、企業年金消失問題で衆院財務金融委員会に参考人として出席し、運用利回りが虚偽で、運用成績改ざんは「私が指示した」ことを認めた。しかし、「だますつもりはなかった」、「(損失を)取り返せる気持ちもあった」などと悪びれた様子はみじんもない。AIJの報酬は約27億円、社長の年収が約7千万円もあり、虚偽や改ざんをする一方で、「年金資産という重みから、どうしても損した形で返したくなかった」と事態の重要性を認識しながら、だますつもりはなかったとは、にわかに信じられない。世の中(投資家や関係者)にその人生も左右するような迷惑をかけながら、なお自己弁護に終始する姿勢は絶対に許せない。
次に、オリンパスである。オリンパスはバブル崩壊時に多額の損失を出したが、その損失を隠す会計処理として、'08年に実態からかけ離れた高額な企業買収を行い、それを特別損失として減損処理し、真の損失原因を隠蔽(いんぺい)しようとした。オリンパスの首脳陣はそれを知りつつ長年公表しなかった。この不透明な企業買収問題を調査して、当時の菊川剛会長らの引責辞任を促したウッドフォード社長が、就任わずか数カ月で突如解任された。
その時の菊川会長のコメントが、「組織内の混乱や、役員、社員の信頼が失われ、“こういう社長のもとではついていけない”という声が出たのは事実」、「文化の壁を越えられない」、「ウッドフォード氏は独断専行的」などと報道された(日本経済、朝日、読売各新聞、2011.10.14.)。一方で、事実が徐々に明るみに出て社長交代した高山社長は、記者会見で「買収の費用や手続きは適正だった」と繰り返した舌の根も乾かないうちに、11/8の記者会見で(隠蔽工作を)「私は、昨日まで知らなかった」と、ぬけぬけと言った。
この場合は、関係幹部が最後の最後まで事実を隠蔽して自己責任を逃れることに汲々とし、責任を他に押し付けている。企業の社会的責任を、何と心得ているのか。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授