プロフェッショナルとして、全ての仕事に一定以上の成果を出しながら、本当に重要な仕事には、「神が細部に宿る」レベルまで仕上げなければいけない。
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材料物性工学科の学生であった私が、研究室のY教授からかけられた言葉です。大学4回生は、最終年度の2月に30分程度の卒論発表を行います。学生であった私たちは、必死に良い論文を作ろうとしていました。正確に表現すると、少なくとも私はそうでした。しかし、Y教授は、大事なのは中身ではなく、発表だと言い切ったのです。
その結果、私たちの研究室だけは、論文の提出締め切りを大学の公式締め切りの1週間前に設定されることになりました。
その1週間に何をしたのか?
やったことは、発表のレベルアップでした。具体的には、発表資料を見やすくすることと発表の練習でした。発表資料を何度も作り替え、どこに色を付けると効果的かアドバイスをもらいました。今でいう1スライド1メッセージを徹底的にたたき込まれたのです。発表も録画し、自分の癖を知り、それを改善することを求められました。8ミリビデオがまだまだ高価な時代です。助手だったMさんが私物を持ってきてくれたのを覚えています。
1週間、時間があったので、空き時間には、論文の誤字脱字などを見つけ、修正などを行い、論文自身も読みやすくすることができました。そして、卒論発表当日。緊張しましたが、何度も予行演習をしていたので、かなり良い発表ができました。質疑応答もそつなく回答できました。結果、私たちの研究室の4年生は評価が軒並み高いものとなったのです。
一方、他の研究室の学生は、論文制作で精根尽き果ててしまい、プレゼン資料の方は、ぶっつけ本番になっている学生が大半でした。当然、質疑応答の準備などできるはずもなく、しどろもどろになっていたのです。
Y教授のアドバイスがなかったら、彼らの姿は私の姿になるところでした。同じ大学、同じ学科の同じレベルの4年生でも、重要なポイントにFocusをするだけで、成果に大きな差が出ることを体感した経験でした。
これも前出のY教授とのエピソードです。理系の学生だった私は数字が好きでした。いろいろな仮説を作り、それをベースに数字で議論をするのが得意でした。そんな私へのアドバイスでした。
「世の中には2種類のバカがいる。一つは数字で何でも分かると思っているバカ。もう一つは数字では何も分からないと思っているバカ。どっちになってもいけない。
正しく仮説ができれば7割くらいのことが分かる。大概のことは7割で判断ができる。しかし、本当に重要なことは残りの3割にあることも多い。ここは数字で表せない感性の世界。これも意識しないといけない」
数字大好きだった私が、数字に加えて感性で深く(Deep)物事を見る重要性を知った経験でした。
これは私が2018年3月までいた会社の上司であるNさんの言葉です。重要な仕事をする場合、細部まで気を配らなければいけないというアドバイスです。
ここまでだと、よく聞く話かもしれません。しかし、Nさんの話には続きがありました。神は細部に宿るのだけれど、全ての仕事にそんなことはできない。乾坤一擲(けんこんいってき)、ここぞという仕事に対して、細部まで気を配らないといけない。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授