働きやすい環境や制度、周囲の人たちの理解や協力もちろん大切だが、自己肯定感なしでは恵まれた環境もうまく作用できない。
女性社員を育成したい、という相談はここ数年で一気に増えました。
女性活躍推進が叫ばれるようになって5年近くたち、少しずつ女性たちをとりまく仕事環境が変わってきています。女性でも働きやすい環境や制度が急ピッチで整えられ、「出産したら退職する」という常識も覆り、育休を経て復職する女性たちも非常に多くなりました。女性管理職の比率も少しずつではありますが右肩上がりに増えています。
弊社のクライアントでも、女性社員を積極的に起用して大きく業績アップした企業もあります。とはいえ一方で、「なかなかうまくいかない」という悩みもよく耳にします。
女性がイキイキと仕事ができるようになるために、一番大切なもの。それは、「自己肯定感」です。働きやすい環境や制度、周囲の人たちの理解や協力もちろん大切。しかし女性たち自身に「自己肯定感」がなければ、そうした恵まれた環境もうまく作用できないのです。
男性と比べて、女性には「自分に自信がない人」が圧倒的に多くいます。実は女性は自分の実力を実際よりも低く見積もる傾向がある、といわれています。例えば同じ仕事を任されていて、男性は進捗が6割程度でも「余裕で目標達成できます!」と自信満々なのに対し、女性は進捗が8割でも「目標達成できるか分かりません」と不安を抱くことがあります。謙遜している訳ではなく、本心でどうにも自分に自信が持てないのです。
自分に自信が持てない、結果を出しても自分の実力じゃないような気がする、といった自身を過小評価する心理傾向は『インポスター症候群』と呼ばれ、誰が見ても超一流の実力の持ち主でさえ陥ってしまうことがあるそうです。FacebookのCOOとして有名なシェリル・サンドバーグ氏も著書『LEAN・IN女性、仕事、リーダーへの意欲』(日本経済新聞出版社)の中で、学生時代からずっと自分に自信が持てなかったと告白しています。
私が主宰する女性のための仕事塾、TSL「トップセールスレディ育成塾」の受講前アンケートでも実に8割以上の参加者が“自分に自信がない”と答えています。
自信がないがために、新しい挑戦を目の前にしても「やったことがないから」「失敗したら嫌だから」「責任が重すぎる……」などいろいろな不安が頭によぎり、避けようとするのです。特に、女性たちは「未経験」のことを「苦手」と言ってしまう傾向が強くあります。
男女で分けるのは少し乱暴だと感じる人もいるかもしれませんが、やはり男性と女性は違います。身体的特徴が違うように、脳の構造も違います。これまで育ってきた環境や、かけられてきた言葉も違い、価値観や考え方にも違いがでます。どちらが優れているとか、どちらが正しいとかいう話ではなく、ただ単純に「違う」のです。
これまでの画一的なマネジメントの在り方は、これから先通用しません。女性に限らず、外国人、デジタルネイティブ世代など価値観の多様な人材が流れ込んでくる時代です。「リーダーなんだから俺に従え!!」と高圧的に己を示したところで部下は付いて来てくれません。部下は一人一人みんな違う。その違いを認めた上で、「どのようにすれば目の前にいるこの部下を成長させることができるか?」「この部下にはどう伝えれば一番理解してもらえるか?」を考えることがこれからの上司の在り方だと私は思います。
さて女性たちの「自信」の話に戻りましょう。女性部下の育成に関して最もよく聞くお悩みの一つが、「仕事を任せようと思ったのに断られた」というものです。せっかく新しい企画に抜てきしようと思ったのに、食い気味に「やったことないから無理です!」と言われてしまい、「やっぱり女性社員はやる気に欠けるな」なんて思ってしまった経験もあるかもしれません。
本来、仕事の世界で「できません」は禁句。せっかくチャンスを提示されたのに断ってしまった女性側にも非があります。だからこそ私は女性たちには「できるかできないか分からなくても、まず手を挙げなさい」と伝えています。そして皆さんにも、自信が持てずに一歩踏み出せずにいる女性たちの背中を押してあげてほしいと思います。
「できません」――「あぁ、そう。じゃあいいや」と一度で引き下がるのではなく、「君ならできると思って声を掛けているんだよ。誰にでも初めてはある。挑戦してみない?」ともう一押ししてみてください。新しいことに挑戦する経験を積むことで、自信がつき、つぎの挑戦へとステップアップできるようになります。
女性に限らず、部下を成長させるためには、仕事を与えるに尽きます。その部下の実力よりちょっとはみ出るくらい、背伸びをしないと難しいくらいの難易度の仕事を与える。そしてクリアできたらまた少し上のレベルの仕事を与える。それを繰り返すことによって大きく成長させることができます。
このとき勘違いしてはならないのが、雑用ばかりを与えて仕事をさせた気にならないことです。先ほどの話とは一転、一部の女性たちからは「仕事をやりたくてもお茶くみやコピー取りくらいしか仕事をもらえない」といった話も聞こえています。彼女たちには、一見雑用に見える仕事も丁寧に取り組むことで、次の新しい仕事につながる可能性があるんだという話をしています。しかしこれはもちろん上司に彼女たちを引き上げる気があってこそ成り立つ話です。「女の子にはこれくらいやってもらえればいいや」そんな気持ちで仕事を振っていないか、今一度振り返ってみませんか?
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授