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» 2019年10月01日 07時07分 公開

既知とアイデアの組み合わせで市場を変えろ:なぜレガシー企業にイノベーションが必要なのか (1/2)

市場は自分たちの手で変えられる。全てのビジネスパーソンにLMIを知ってほしい。

[永井俊輔,ITmedia]

先人たちが育んできたレガシーがある

『市場を変えろ 既存産業で奇跡を起こす経営戦略』

 はじめまして、永井俊輔です。クレストHDの代表取締役を務めています。

 クレストHDは、看板やデジタルサイネージの製作・設置、小売業向けのリテールテック、生花販売の小売り事業などを手掛ける会社です。今秋からは新規事業として建材の販売もスタートします。

 見ての通り、事業の業種はバラバラです。しかし、その根底にはわれわれの事業の本質ともいえる大きな共通点があります。それは、伝統のある業界にイノベーションを起こし、既存の市場を成長性ある市場に刷新することです。この取り組みを、われわれはレガシーマーケット・イノベーション(LMI)と呼んでいます。

 レガシーは、業界の先人たちが作り上げてきたさまざまな価値のことです。既存の市場(レガシーマーケット)には需要、流通網、サプライチェーン、関連企業のつながりといったレガシーがあります。その市場で活動する個々の会社(レガシー企業)には、技術、技術者、成功と失敗の経験、金融機関の信用などのレガシーがあります。これらレガシーを最大限に活用するとともに、IT、AI、新たなビジネスモデルといったイノベーションの要素を加えることがLMIの基本的な考え方です。

 旧態依然とした業界の構造はLMIによって変わります。市場規模の伸び悩み、レッドオーシャン内の競争、人手不足といった課題もLMIが解決策になります。なぜそう言い切れるのかというと、クレストがLMIによってさまざまな経営課題を克服したからです。

「看板+カメラ」が生んだイノベーション

 私はもともと投資ファンドに勤めていましたが、2009年に家業であるクレストに入社し、看板部門の営業に配属されました。クレストは私の父が創業した会社で、私は2代目です。いずれ会社を受け継ぐことは生まれた時点で決まっていましたし、投資ファンドに就職したのも、経営について学ぶという側面がありました。

 そのころの看板業界は市場が伸び悩みつつあり、「斜陽産業」と呼ぶ人もいました。

私自身、正直「看板屋か」と思いましたし「モテなさそう」とも感じました。しかし、文句を言っていても始まりません。クレストを成長させていくべく、父と先輩社員たちに教えを乞いながら、与えられる仕事に本気で取り組むしかないのです。

 そんな時、街中でカメラを搭載した自動販売機を見つけます。買う人の性別や年齢などを分析して、オススメのドリンクを表示する自動販売機です。それを見て、私はふと考えました。「看板にカメラをつけたら、もしかしたら面白いことができるかもしれない」

 カメラを使えば、どんな人が、どれくらいの時間、看板を見たか計測できます。看板を見て入店した人の割合も分かります。すでにWeb広告の業界ではサイトを訪れるユーザーの行動、滞在時間、動線などを分析するのが当たり前になっていました。しかし、看板は、作り、設置し、終わりです。効果測定という観点がなかったのです。

 そこにイノベーションの可能性を感じた私は、早速プロトタイプを作り、ニーズを探りました。その後、多少の紆余曲折を経て、カメラを使って看板やディスプレイの効果を測定・数値化するサービス エサシーが誕生するのです。

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