縦割り・タコつぼ打破のための9か条視点(1/2 ページ)

企業統治にルールと権限は必要である以上、多かれ少なかれ、官僚的な要素は不可欠であるが、過度な官僚化は「縦割り」を招き、自己の利益を優先する「タコつぼ」がいたるところに発生する。

» 2021年04月26日 07時00分 公開
Roland Berger

縦割り・タコつぼの弊害は年々大きく

 企業統治にルールと権限が必要である以上、多かれ少なかれ、官僚的な要素は不可欠である。ただし、過度な官僚化は「縦割り」を招き、自己の利益を優先する「タコつぼ」がいたるところに発生する。

 どの会社にも程度の差はあれ、必ず縦割り・タコつぼは発生しうるが、放置すると万病のもとであり、損失は計り知れない。

縦割り・タコつぼの弊害

  • 無駄なコミュニケーション・コスト
  • 情報のブラックボックス化
  • 社内利権の発生
  • シナジーの喪失
  • イノベーションの停滞……

 テクノロジーやビジネスモデルの発展が目覚ましい中、縦割りの膠着状態は組織の成長を阻害する。組織の壁を超え、各自が持っているアセットからシナジーを生み出し、スピーディに意思決定していく、縦割り・タコつぼの打破が非常に重要である。

組織に向き合うための要諦

 打破にあたっては、以下の3領域、9か条を念頭に、手を打っていくことが有効である。

1、ビジョン・文化

(1)企業が一丸となって目指すべき「北極星」の共有

(2)縦割り・タコつぼ対策の重要性にかかる社員の啓蒙

(3)共感・協働を促すカルチャーの醸成

2、組織・仕組み

(4)縦割り・タコつぼ打破に向けた、継続的な組織施策の実践

(5)全社シナジー・横ぐし専門部隊の設置

(6)他部門・職種をつなぎ共通言語で語れる人材ハブの配置

(7)内外連携の促進、外部アセットの最大活用

3、インフラ・ナレッジ

(8)社内のアセット・ナレッジのオープン・データベース化

(9)先端デジタル技術・業界先進事例のキャッチアップ

1、ビジョン・文化について

 (1)企業が一丸となって目指すべき「北極星」を共有し、そこに皆が向かうことは、容易ではないが組織の健全化に向けた本質的な施策である。

 (2)ただし、経営企画部が横ぐしプロジェクトの旗振りをしても、現場がついてこないことは多々ある。社内の一人一人が縦割り・タコつぼの弊害や打破するメリットを自分ごと化しないと改善は難しく、継続的な啓蒙活動が必要である。

 (3)2014年にCEOに就任し、マイクロソフトの復活を実現したサティア・ナデラは、組織文化の再構築を最優先に取り組んだ。就任当時、同社は各セクション・幹部が対立していが、ナデラ氏は「Empathy、共感」の重要性を繰り返し伝え、共感のカルチャーを醸成し協働を促した。カルチャーは仕組みづくりに先立ち整備すべきポイントである。

2、組織・仕組みについて

 (4)インターネット広告代理店のセプテーニは、日々「横ぐしを通す取り組み」を継続的に実施。「働き方改革」など、各部門メンバーを集めた横ぐしプロジェクトの立ち上げや、部門横断機能の設置、経営メッセージ発信などを継続。縦割り・タコつぼに日々向き合い、重症化を防いでいる。 平時のマネジメントの中でも、プロジェクト発動や人事異動など、効果的にタコつぼを割る施策は複数存在する。継続的に多様な取り組みを実践していくことが重要である。

 (5)楽天は社長室を既存事業と切り離して置き、社内の膨大な事業を俯瞰してシナジーや新規事業探索を専門とするチームを設けている。シナジーや新規事業の探索においては、既存事業から指揮系統を分離してしがらみを解き、専任メンバーを配置することが効果的である。

 (6)各部門・職種の壁を超えた議論のためには、全体を俯瞰でき、他部門・職種との共通言語で話せるハブ人材が、各所をつなぐことが第一歩。社内勉強会や横ぐしプロジェクトの活性化、長期的な目線での採用・人事異動戦略、外部高度人材の採用により、ハブ人材を拡充していくことが有効である。

 (7)自社とは異なるケーパビリティを持つ外部と連携して行くことは、スピーディな進化に不可欠である。社内を横ぐしで俯瞰できる人材・部門が窓口となり、社内の全てのアセットを外部連携で強化する体制の構築が望ましい。

3、インフラ・ナレッジについて

 (8)社内のアセット活用にあたっては、そもそもどのようなアセット・ナレッジがあるのかの見える化が必要であり、ビジネスICTツールの導入が欠かせない。ただ、ツールを導入しただけで有効活用しきれていない企業も多い。 まずはツールの導入の前に、アセットやナレッジを棚卸し、どのようなシナジーが創出できるかの仮説・ゴールイメージを持つことが有効である。

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