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» 2021年09月21日 07時03分 公開

変化の激しい現在、多様性を認めることが競争力を高める重要なカギ――SUBARU IT戦略本部 情報システム部長 辻裕里氏「等身大のCIO」ガートナー 浅田徹の企業訪問記(1/2 ページ)

2025年に向け、「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」というビジョンを推進するSUBARU。自動車・航空宇宙の両事業で着実なる持続的成長への足場を固めている。

[聞き手:浅田徹(ガートナージャパン), 文:山下竜大,ITmedia]

 車や航空機などのモノや技術を生み出すだけでなく、顧客の笑顔をつくる会社になることを目指すSUBARU。根本にあるのは、人を中心に考え、使う人にとって何が大切かを考えつくし、車に新しい価値を生み出す「SUBARUらしさ」である。

 2025年に向けた中期経営ビジョンでは、組織風土改革、品質改革、SUBARUらしさの進化という3つのビジョンを重点的に推進している。中でも組織風土改革では、「意識を変え、行動を変え、会社を変える」を合言葉に、社員一人一人が考え、自発的な行動を促す取り組みを展開。成果の一つとして、ITツールの急速な活用により、部門をまたいだコミュニケーションが自発的に活性化している。

 SUBARUらしさを進化させるためのIT/デジタル戦略について、SUBARUのIT戦略本部 情報システム部長である辻裕里氏に、ガートナージャパン エグゼクティブ プログラム バイスプレジデントの浅田徹氏が話を聞いた。

SUBARU IT戦略本部 情報システム部長 辻裕里氏

IT活用による働き方改革でイケてる会社の仲間入り

――まずは、2020年度の優秀社員表彰(社長賞)の受賞、おめでとうございます。受賞理由など聞かせてもらえますか。

 この賞は個人ではなく、情報システム部がチームとして受賞したものです。受賞理由は、「コロナ禍における在宅対応から働き方改革へのITの挑戦」をテーマに、ほぼゼロから1万人以上の在宅勤務環境を整備、紙文化からの脱却、併せて人事パッケージや会計システムの導入、工場系システムの刷新、旅費精算と電子マネーの連動などの仕組みをコロナ禍の1年で稼働させ、定着させたことが評価されました。

 表彰式はリモートで開催されましたが、工場間接含めて全社がリモートコミュニケーションに慣れていたのでとてもスムーズでした。昨年春の緊急事態宣言まで在宅勤務の制度もWeb会議の文化もありませんでしたが、環境整備に比例してツールを使いこなせる社員が増え、現在はリモート会議だけでなく、人事の採用や教育などもリモートでできるようになり、表彰式が終わった後に人事担当者から「こんな状況でも、全社イベントを実施できるのは、ITのおかげだとしみじみ思った」という感謝の言葉をもらいました。といっても通信が不調のときは一気にクレームが届くので、継続改善中です(笑)

 社内システム担当部門が社長賞を受賞するのは初めてのこと。いろいろな部署から、「情報システム部が、こんなに脚光を浴びる日が来るとは思わなかった」と言われる1年でした。特に子育て世代の社員からは、在宅勤務など働き方が変わったことに感謝されています。少し前まで周回遅れのITと思われていましたが、今ではイケてる会社の仲間入りができたのではないでしょうか。

――ゼロから1万人のリモートワーク環境を実現したのは驚きです。情報システム部の皆さんはヒーローですね。この仕組みがなければコロナ禍で大変なことになっていました。

 うちの部署だけでなく、情報子会社もベンダーさんも、関係会社含めた利用者の皆さんが、定着に向けて本当に頑張ってくれました。コロナ禍は不幸ですが、これがなければ今のレベルに引き上げるのに、5年以上かかったのではないでしょうか。皆が一足飛びに変わるまたとないチャンスと捉えて取り組んだことは確かです。

 アフターコロナにおいても、今の働き方は定着するでしょうし、もっと発展させなければいけないと考えています。今回は他社より遅れていたことを引き上げる活動が中心でしたが、今後はプロセス改革やDXへ活動を広げ、1段抜かし、2段抜かしのスピード感で動き出した改革のチャンスを生かしていきたいと思います。

いつでも、どこでも、場にとらわれず同品質な仕事ができる環境を提供

結婚、子育てを機に、日本IBMからUターンで地元企業、そして50歳でSUBARUへ

――これまでのキャリアについてうかがえますか。

 SUBARUの創業の地である群馬県太田市で生まれ、SUBARU以外の車が走っているのを知らずに幼少期を過ごしました。大学卒業時に、これからはITスキルが重要だと考え、日本IBMに新卒入社しました。天職かと思うくらい仕事が楽しかったのですが、過酷な勤務だったこともあり優秀な同期の女性達が結婚や出産で会社を辞めていくのを見て「もったいない」と感じていました。

 そこで、週末を使って女性の就業を支援するため、美容と健康をテーマに起業、今でいうWワークを始めました。20年以上前、寿退社が常識の時代だったので、「もったいない」を理解してもらえず悩みました。遊び感覚で楽しかったのですが、しばらくして自分も仲間も出産が続き、大人より子供の数が増えた時点で断念しました。

――「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」の施行が2015年9月なので、20〜25年前に理解してもらうのは難しかったでしょうね。SUBARUに転職したきっかけは何だったのでしょう。

 仕事と子育ての両立のために地元の部品メーカーに移り、IT企画やプロマネを行い、途中総務部長を経て、ITの執行役員をやらせていただきました。そして子育てや介護などが一通り終わり、次のステップを考え始めた矢先に、浜松で開催された品質シンポジウムで吉永前社長の講演を聞く機会があり、SUBARUの車しか走っていない町で育った自分には感動と衝撃でした。愛すべき会社と思った数カ月後に、エージェントから話がありご縁を感じてSUBARUに移りました。

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