副業は敵か、味方か――副業で自分を鍛え、ノウハウを本業に生かせる会社が若者に人気ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

DXや技術の進展により、人が複数の「コト」をする時代になっている。その背景として、多くの人が多様な価値観を持ち、さまざまなことを実現したいという思いと、健康で長生きできるようになったことがある。

» 2021年11月02日 07時00分 公開
[山下竜大ITmedia]

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、iU 情報経営イノベーション専門職大学教授で複業家の江端浩人氏が登場。著書『【スタンフォード式】世界一やさしい パラレルキャリアの育て方(かんき出版)』の内容に基づいて、「人生100年時代、今日から始めるパラレルキャリアの育て方」をテーマに講演した。

いまなぜパラレルワークなのか

『【スタンフォード式】世界一やさしい パラレルキャリアの育て方』

 「いきなりですが、皆さんに質問です。御社は、副業が可能ですか。またご自身は、副業をしたいですか、するつもりはありませんか、検討中ですか?」(江端氏)。

 いまなぜパラレルワークなのか。ある調査では、企業が副業を全面容認、または条件付容認する割合の合計が、2021年に約55%になったと報告されていることが背景にある。これまで副業をやりたいと考えても、毎日通勤していては時間的に困難だった。しかし在宅勤務が可能になったことにより、通勤時間がなくなり、副業がやりやすくなった。

 また、副業に必要なインフラ、および自宅のデジタル環境が整備され、コミュニケーションツールの発達により、遠くの人とも簡単にリモートでコミュニケーションできるようになったのも要因の一つだ。また、多くのマッチングサイトが登場したことも副業を容易にしている。

 マッチングサイトとは、例えば「ココナラ」は、知識やスキル、経験などの得意なことをサービスとして出品/購入することができる。他にも写真を撮るのがうまい人が、週末にSNS用のポートレートを撮影してくれたり、コンサルをしたり、似顔絵をかくなど、さまざまな分野で専門家に頼むより安価にサービスを提供/利用することができる。

iU 情報経営イノベーション専門職大学教授、複業家、江端浩人氏

 ダイバーシティやSDGs、ジェンダーなども重視されており、VUCAの時代には各人が経験を積んでいくことが重要。米国の大手コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、ダイバーシティに富んだ経営陣がいる会社は、単一的な経営をしている会社よりも収益率が高い企業が3割多いと報告されている。

 「大学教授/コンサルタント……」のような、複数のタイトルを持つスラッシャー(区切り線)も増えている。SNSにおいては、「愛犬家」や「ランナー」など、ライフスタイルも含めたスラッシャーも当たり前になっている。

 江端氏は、「人生100年の時代なので、健康な長い人生には、生きがいが必要であり、ライフワークについて考えるようになります。特に若い人は、自分がやりたいことは自分で決めたいと思っています。会社の場合は辞令で配属が決まりますが、肩書や年収より、自己決定権が幸福度の最大の指標であり、自己決定権は学歴の10倍の幸福度という調査結果も神戸大学から発表されています」と話している。

ライフワークとライスワークの2軸で働き方を考える

 『「キャリア未来地図」の描き方(千葉智之、原尻淳一共著:ダイヤモンド社)』の中に、「ライフワーク」と「ライスワーク」の2軸で働き方を考えるということが書いてある。主にお金のために実施する仕事が「ライスワーク」で、夢や自分の好きなことを追い求める活動が「ライフワーク」である。江端氏は、「私自身は、2軸だけでなく、3軸でも、4軸でも、パラレルでやればいいと思っています。ライフワークとライスワークは、別々の関係ではなく、両方やることが重要です」と話す。

 著述家、評論家である勝間和代さんは、著書『健康もマネーも人生100年シフト! 勝間式ロジカル不老長寿(宝島社)』で、医療化学の進化により100年生きる時代、引退してから40年以上の余生があり、キャリアを考える上で実年齢マイナス20歳が適切という気持ちが必要。引退、定年という概念が変化するとしている。

 さらにサントリーの新浪剛史社長は、2021年9月に「45歳定年制」にすることで、30代、20代がみんな勉強するようになり、自分の人生を自分で考えるようになる。自分たちが勉強し、会社に頼らない、会社は良い人材に残ってもらいたいそのための仕組みが必要であると話している。

 江端氏は、「45歳定年制は、物議をかもしましたが、個人的には日本企業が国際競争力強化のためには必要な取り組みだと思い考えます。GAFAMで、日本の株式市場を超える時価総額の現在、多くの人材が外資系企業に流れ、日本企業の人材採用が困難になっています。若者の自己決定が、学歴や年収より重要だという調査にもあるように、副業を認めない会社には就職しないとう傾向もあります」と話している。

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