連載
» 2007年10月22日 11時00分 公開

特選事例:能力の限界超える危機を克服――サーバ増設に替わる解決策 (1/2)

メール流量の飛躍的な増加に対応するための基本的な目標地点は、「ポテンシャル増強とコスト削減」。これらの両立こそ抜本的な解決策といえる。

[ITmedia]

効果測定

サーバー1台あたりの稼働率を約50%軽減


導入前の課題

オープンソース系のメールサーバソフトを汎用サーバ機器上で稼働させ10数台以上増設してきたが手間と処理能力が限界に。迷惑メールやメールマガジン、HTMLメールが増加することでメール流量がサーバの処理能力を超える可能性も出てきた。


導入後の効果

アクティブ+スタンバイのクラスタ構成でメール容量制限コントロールが容易になり、耐障害性も改善。N+1クラスタ構成によって障害発生時もスタンバイがフェールオーバーし、ポテンシャル増強とコスト削減を両立した。


大手CATV事業者としての責務

 ひまわりネットワークは、多チャンネルケーブルテレビ事業を柱に、インターネット事業およびプライマリIP電話のケーブルプラス電話事業の3つを「トリプルプレイ・ワンストップサービス」として提供する大手CATV事業者である。

 愛知県豊田市と三好町、長久手町の1市2町をエリアとし、地域総世帯数の3分の2におよぶ約12万世帯にサービスを提供する。また、1998年にインターネットサービス「Aitai net(アイタイネット)」を開始。蒲郡市、岐阜市、多治見市にそれぞれ本社を置くグループCATV会社3社を合わせ、10万近い世帯が加入する地域型ISPとしての顔も持つ。

 同社は、02年にAitai netにおけるウイルスチェックサービスのため、ミラポイントのメッセージディレクタ「MD400」(現在のRazorGate)を3台の冗長化構成で導入した。当時、ISPのウイルスチェックサービスは有料が多く、それを無料で提供するひまわりネットワークのサービスは好評を得ていた

サーバの増設はもはや限界

 しかし、その頃からスパムメールが社会問題化し始め、メールトラフィックが予想を超えるペースで増加していった。それまでは、オープンソース系のメールサーバソフトを汎用サーバ機器上で稼働させ、アカウント/メール流量の増加に伴ってサーバを10数台以上増設してきたが、細かいメンテナンスが必要であり、今後のメールの処理能力を考慮するとシステム運用はもはや限界と考えられた。

 そこで同社は、既存のサーバ群に手を加え運用し続けることを断念。メールボックスへの容易なコントロールが可能で、信頼性を維持できるメール専用システムを検討する中で、04年、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の提案により、ミラポイントのメールサーバー「M4000」による、アクティブ+スタンバイ(1+1)のクラスタ構成でメールシステム環境を構築した。

N+1クラスタ構成の再構築

 同社のシステム部で係長を務める鈴木修悟氏は、長年メールシステム管理の中心的な役割を担ってきた。同氏は、「メール容量制限コントロールが容易になり、耐障害性も飛躍的に向上しました」と当時を振り返る。06年になると、Aitai netのアカウント数は10万以上に拡大。ところが、日本でもボットネットによる迷惑メール被害が拡大する一方、広告メールやメールマガジン、画像を多用したHTMLメールも増加するなど、1通あたりの容量も肥大し、改善したメールサーバー構成でも限界を超える可能性が生じ始めていた。

 そこで、同社はメール環境の再構築を決断。M4000×2台に替えて、同じくミラポイントの新モデルM5000s×3台のN+1クラスタ構成(アクティブ+アクティブ+スタンバイ)にすることで、アクティブとなるサーバーが2台となり、サーバー1台あたりの稼働率を従来の約50%にまで下げることに成功した。

 「万一障害が発生しても、スタンバイがフェールオーバーする仕組みのため、大幅なポテンシャル増強とコスト削減の両立を実現できました」(鈴木氏)

ひまわりネットワーク システム部係長 鈴木修悟氏

 また、同社のコンテンツ部長とシステム部長を兼務し、今回のメールシステム改革のプロジェクトを監修した倉地公彦氏は、ひまわりネットワークが単なるISPではないと強調する。

 「当社のように、ネットワークインフラの整備・運用からインターネットサービスに至るまで、一貫して利用者に提供できる企業は、国内ではNTT等の大手通信キャリアや電力系企業等に限られています。よって、それらの巨大企業と同等のサービスレベルが求められるのです」(倉地氏)

 サービスの地盤となる豊田市は、トヨタ自動車のお膝元でもあり、精神的な実直さと物事の本質を見極めて、間違ったものは選択しない文化を持つといわれる。その地域でトリプルプレイサービスを行う以上、信頼性と品質に関しては同業他社よりも数段シビアに考えるという。それだけに、このエリアで自社のサービスが選択され拡大していることに、倉地氏たちは誇りを持っている。

ひまわりネットワークコンテンツ部長兼システム部長 倉地公彦氏

 「現在、日本には都市型のCATV会社が400社ほどあるといわれ、それぞれがISPとして事業を行う以上、業界全体がサービス品質を高めるべき」との考えを述べる倉地氏は、セキュアなメールシステムが広く活用されることで、業界全体 のサービス品質が高まっていくことを強く期待している。

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