連載
» 2007年12月05日 11時00分 UPDATE

新世紀情報社会の春秋:インターネットで加速するコンテンツ経済(後編) (1/2)

コンテンツビジネス全体がインターネットの進化とともに変化してきている。コンテンツの所有概念1つとってもその兆しははっきりと見える。

[成川泰教(NEC総研),ITmedia]

販売ビジネスモデルは今後はさらに多様化する!

 インターネットの普及が、広告をベースとしたビジネスモデルの進化を加速し、それによってコンテンツ業界のビジネスモデルは大きく変わりつつあるように思う。1つはコンテンツの流通と所有概念に関する変化だ。iPodが成功し始めた頃、アップルのスティーブ・ジョブズCEOは音楽配信において、定額制の様なモデルが成功しないことについて、次のようなことを言っていた。利用者は音楽を所有したいのであって、それがたとえ電子ファイルの様な目に見えない形であったとしても、自分の手元(すなわちiPodの中に)に持っておきたいのだ。

 少し前までは筆者もこの言葉に非常に共感していたのであるが、実際に配信サービスを利用し始めて感じるのは、所有の概念が今後さらに進化するということだ。具体的にはiTunesStoreや米国アマゾンのように、膨大なカタログを抱える配信サーバの存在を知ったなら、もはやファイルが手元にあるかどうかではなく、自分が購入した音楽データにいつでもアクセスできる権利があれば、それが音楽を所有しているという概念になるのではないだろうか。もちろんこれは音楽に限ったことではない。

 もう1つは、コンテンツへの対価すなわち販売ビジネスモデルの変化。これは、現在すでにそうなりつつある部分もあるが、圧縮形式のデータそのものをネットで配信販売することに対して、クオリティの高いデータをディスクに収録し、綺麗な装丁を施した「モノ」として販売することが、ある種のプレミアムとして認識される方向に進んでいる。配信が一般化することで、高級品としてのパッケージソフトの価格は、今後上昇に転ずるかもしれない。

 そしてこれをもう少し拡げて考えると、現在のデータ配信の下位に位置するものとして、無料のトライアルコンテンツ(例えば低品質のデータ)の存在が想定できる。これは広告経済的モデルを意識したものだが、従来シングル盤として位置づけられてきた概念が、それに代わってゆくかもしれない。

 さらにその対極に位置するものとして、さらなるプレミアム性としての体験型コンテンツ(つまり生演奏)の存在を想定することができる。もちろん、原価の意味合いが異なってくるので、単純に値段での比較はできないと思う。一昔前には、コンサートツアーは赤字でもアルバム販売で稼ぐことができるということが言われた時代もあった。ライブは幅広いファンに開かれたものでなければと、いくら人気のあるアーチストでもチケットを高額に設定することを避けているという時代もあった。気がつけばコンサートチケットの値段というのも随分と上昇しているようだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆