西原春夫「人生はすべて偶然で決まる」(前編)西野弘のとことん対談(1/2 ページ)

少子化の進行に伴い、我が国の大学は間もなく“淘汰の時代”を迎える。それを早くから予見し、国立大学とは違う独自の私学マネジメントを訴えてきたのが、早稲田大学元総長の西原春夫名誉教授だ。

» 2008年02月12日 11時01分 公開
[ITmedia]

西原春夫(にしはら・はるお)氏

1928年東京生まれ。早稲田大学法学部、大学院法学研究科で法律学を学び、同大学教授、法学部長、総長を歴任。刑法学の権威として法学界で活躍するとともに、私立大学のリーダーとして教育界にも大きな足跡を残している。また世界各国でも刑法学者、教育家として高い評価を受け、各国大学から名誉博士、名誉教授などの学位・称号を贈与されている。2005年10月にはNPOアジア平和貢献センターを設立し、理事長に就任。

西野弘(にしの・ひろし)氏

株式会社プロシード代表取締役。1956年4月生まれ、神奈川県出身。早稲田大学教育学部卒業。ITとマネジメントの融合を図るコンサルティングを中央官庁や企業に展開。「装置社会」から「創知社会」の実現を目指す。教育と福祉がライフワーク。


※月刊アイティセレクト」2006年6月号の「西野弘の『とことん対談』この人とマネジメントの真髄を語る」より。Web用に再編集した。肩書などは当時に基づく

 少子化の進行に伴い、我が国の大学は間もなく“淘汰の時代”を迎える。それを早くから予見し、国立大学とは違う独自の私学マネジメントを訴えてきたのが、早稲田大学元総長の西原春夫名誉教授――。

 同氏は6・3・3制の画一的な学校制度に異を唱え、「大学が世界に誇る英才を輩出できない日本の将来は危うい」と警告する。その一方で、北東アジアの平和構築を目指すNPO(非営利法人)を設立、国際貢献にも労を惜しまない。刑法学の泰斗を精力的な行動に駆り立てる、その原体験とは何なのか・・・・・・。

西野 先生は2005年10月にNPO「アジア平和貢献センター」を設立され、78歳になられた現在も国内外で盛んに活動していらっしゃいます。戦前戦後の激動期を生きて来られて、どういう精神遍歴をたどられたのか、まずその辺りからお話しいただけますか。

西原 昭和初期生まれの私たちは極めて特異な世代なんです。1945年の終戦の時、私は17歳でした。ちょっと上だと学徒出陣、下だと学童疎開の世代ですが、私たちはその狭間で銃後少年の年長者でした。私は典型的な愛国少年でしたから、当時の教育を頭から信じていた。それが8月15日を境にすべて変わったんです。人生で最も多情多感な時期に、時代の一大転換を迎えたことは大きな衝撃でした。ひと言でいえば“大人不信”になった。

西野 なるほど。天皇陛下のために死になさい、と言っていた教師が、民主主義を唱えても信じられないということですね。

西原春夫氏 早稲田大学元総長、NPOアジア平和貢献センター理事長の西原春夫氏

西原 そうです。つまり、みんなが正しいと言うことは怪しい、うさん臭いと思うようになった。戦後の憲法についてもそうです。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、いずれも頭から信じられない。結局、自分しかないんです。自分で必死に学んで必死に考えるほかない、それが法律家としての私の信念になりました。だから私はひねくれ者になって、今もみんながやるゴルフ、マージャンはやらない、ベストセラーは読まない(笑)。

西野 それは私も同じだなぁ。

西原 例えば「構造改革なくして成長なし」とみんな言うでしょ。こういう主文章だけの議論は分かりやすくても、必ず間違う。物事には副文章が必要なんです。「〜すれば」「〜だから」と前提や条件を設定して、初めて物事はみえてくる。○か×かの議論は国民を誤らせます。ナチスに歓呼の声を上げたドイツ国民がいい例。怖いですよ。

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