日産の情報システム革新「BEST戦略」 キーワードは「標準化」(1/2 ページ)

1999年の経営危機から奇跡的な回復を遂げた日産自動車。それでも同社は改革の手綱をゆるめることはない。2006年からは情報システム部門を世界レベルにまで引き上げることを目指した「BEST戦略」に着手。その核となる施策は、情報システムの標準化だ。

» 2008年02月13日 13時22分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

世界に通用する情報システムを目指す「BEST戦略」

 2010年までにワールドクラスレベルの情報システム部門になる――仏Renaultからカルロス・ゴーン社長を迎え入れることで、奇跡的な回復に成功した日産自動車。さらなる競争力の強化に向け2006年から情報システム部門を開始したのが「BEST戦略」だ。

 BESTとは「Business Alignment」(業務部門と情報システム部門の関係強化)、「Enterprise Architecture」(情報基盤の最適化)、「Selective Sourcing」(ITベンダーとの関係の見直し)、「Technology Simplification」(テクノロジの標準化と簡素化)の頭文字を取ったもの。ビジネスと整合性の取れた情報システム戦略を実行する指針だ。

 IDSシェアーが1月に開催した「Scheer Seminar/ARIS Process Day Tokyo 2008」で、日産自動車グローバル情報システム本部エンタープライズ・アーキテクチャ部部長を務める佐野義仁氏が、同セミナーでBEST戦略の概要と、その実現に向けた具体的な取り組みを話した。

組織体制を刷新し、ビジネス部門の参画を促す

 BEST戦略は、日産自動車のITにまつわるコスト構造を入念に分析した末に分かった、日本、欧州、北米におけるグローバルビジネス展開の結果生じた問題を解消するために策定された。

 BEST戦略を進めるにあたって、同社がまず実施したのが(1)各ビジネスプロセスで用いられているITと、ITに起因するコストの徹底的な洗い出し、(2)ビジネス部門からITコストの年次予算に責任を負うリーダーの選出、(3)予算を協議するステアリングコミッティの設置――の3つ。

 この目的は一重に「業務部門が主体となってITシステムに責任を負えるようにするため」(佐野氏)だ。

 「投資の優先順位を付けるにあたっては、現場の声を無視することはできない。ITコストの透明性を高めてコストを削減につなげるには、情報システム部門がビジネス部門を巻き込んで作業を進める体制が不可欠」

 メスは当然、情報システム部門にも入れられた。組織構造をシステムのライフサイクルに即した「企画」「開発」「運用」という従来型の体制から「生産・物流」「マーケティング&セールス」「HR(人事)」「購買」といった業務ドメイン別の体制に変更したのだ。

 こうした一連の取り組みによって、BEST戦略の「B」を遂行できる体制を整備。その上で、同社は「E」を実行に移した。具体的には、EAの考えに則り、業務ごとに利用されているあらゆるアプリケーションのポートフォリオ分析を基に、情報システムのコストや利用頻度などの観点から、システムの「健康状態」を把握できる仕組みの構築に乗り出した。

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