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» 2008年10月31日 09時28分 UPDATE

「破壊的技術」がゆく:クラウド時代にシステムインテグレーターは生き残れるのか (1/2)

ガートナージャパンのアナリストが記者の質問に応じた。クラウドコンピューティングの普及で情報システム室やシステムインテグレーターの仕事に変化は起きるのか聞いた。

[怒賀新也,ITmedia]

 ガートナージャパンは年次イベント「Gartner Symposium ITxpo 2008」の最終日となった10月29日、プレス向けのブリーフィングを開催し、記者の質問にアナリストが応じた。

 情報システムをインターネット経由で利用するクラウドコンピューティングが将来的に広く普及した際に、これまでシステム基盤開発やアプリケーション構築などを担ってきた情報システム室やシステムインテグレーターの仕事が失われる可能性が指摘されている。「破壊的技術」とも言われるクラウドが既存の仕組みに与える影響について聞いた。

 「情報システムは発電所モデルになる」

mataga.jpg 最上級アナリストの亦賀氏

 最上級アナリストの亦賀忠明氏は強調する。従来のように各社が個別に情報システムを構築するのではなく、多数の組織が同じ「発電所」がつくった電気を利用する形態に変化するという。ここで、発電所にあたるのがクラウド(雲)である。

 具体的には、電子メールや情報ポータルなどをSaaS(サービスとしてのソフトウェア)形式で利用するケースなどが考えられる。だが、現状では、勘定系や受発注システムなど事業の生命線であるミッションクリティカルなシステムがクラウドで置き換わることはない、という意見も多い。クラウドの技術面の未熟さを指摘し、高信頼性が求められる分野では利用されないとする考え方だ。

 背景には「自社の大切な顧客データを他人に預けられるか」という意見がある。だが、この意見に次のように答える人がいる。

 「お金を銀行に預けるより、タンスにしまっていた方が安全だと思っていますか」

 「初期のインターネットや携帯電話の歴史が、そうした技術的な問題を時間が解決することを証明している」とある専門家は指摘する。長い目で見れば、預金と同様に「“預システム”の方が安全」という常識が生まれる可能性は否定できない。

システムインテグレーターの将来

 リサーチグループバイスプレジデントの山野井聡氏は「カスタムの開発はなくならない」と指摘する。ゼロスクラッチではなく、SOA(サービス指向アーキテクチャ)などの技術を利用し、低コストですばやいシステム開発手法が主流になるという。システムインテグレーターはこれを支える存在として生き残る。「人月ベースでシステムを構築している限り状況は変わらない」(山野井氏)と分析する。一方で、流通やアパレルなど各業界がシェアドセンターのようなシステム環境を構築し、共同で利用するといった新しいIT活用方法の出現も考えられ、その場合は状況が変化する可能性があるとしている。

horiuchi.jpg アプリケーション担当バイスプレジデントの堀内秀明氏

 アプリケーション担当のバイスプレジデント、堀内秀明氏は「何かがひっくりかえるようなものではない」と話す。「日本郵便がSalesforce.comによるSaaSの仕組みですばやくシステムを構築した。従来そのスピードで構築する方法はなかった。ただし、ユーザーにとっては構築手法に1つの新しい選択肢が加わったに過ぎない」(堀内氏)

 だが、「10年単位で見れば情報システムの多くがクラウド型の仕組みで運用されているといった状況が起きていても不思議はない」。これはガートナーの複数のアナリストが共通して持っている認識でもあった。ハードウェア担当バイスプレジデントの田崎堅志氏は「(クラウドは)確実な流れだ」と認める。

 「日本企業の情報システム部門は保守的であるため現状の否定を意味するクラウドは広まらない」といった声もある一方で、「クラウドに興味を持つユーザーは大手企業を中心に確実に増えている」と亦賀氏は指摘する。ITによる変化に積極的なユーザーが確実に存在するようだ。

情シス、SIerの役割に変化

 こうした話題になると「情報システム室やシステムインテグレーターは消えるのか」といった絶対的な議論になりがちだが、実際には相対的な視点がより重要である。情報システム室やシステムインテグレーターの仕事がもし現状の3分の2になったら、膨大な数の「失業者」が発生すると単純に考えられるからだ。

 実際に、ガートナージャパンでエグゼクティブ プログラム(EXP)エグゼクティブ パートナーを務める小西一有氏は「2015年には企業のIT部門の中でITスキルを持つ人が現在の3分の1になる」と指摘する。同社は今回のシンポジウムを通じて、クラウドコンピューティングを「産業革命に匹敵する技術」と位置づけている。さまざまな意見をまとめると「革命」であるかはさておき、大きな変化を起こし得る装置であることは間違いがなさそうである。

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