なぜあの人は、いつも成果を出せるのか?── 「ほんとうに」仕事ができる人が持つ2つの資質ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

立場に関係なく、周りから信頼され、どんな状況でも仕事が速く、たんたんと成果を出す――「あの人、仕事できるよね?」と言われる人は、日ごろから何を考え、行動しているのか。『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』の著者で、経営コンサルタントとして1万人超のビジネスパーソンを見てきた安達裕哉氏が、仕事ができる人に共通する資質を紹介する。

» 2024年04月11日 07時08分 公開
[安達裕哉ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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「自分より優秀な人」の人数がその人の器を示す

『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』

 人を採用することに関して、本田宗一郎の含蓄のある言葉を紹介する。

 「どうだね、君が手に負えないと思う者だけ、採用してみては」

 「言うは易(やす)く行なうは難(かた)し」の見本のような言葉だ。本田宗一郎は「自分の手に負えない者」こそが、優秀で採用したい人物だと言っている。

 本田宗一郎の器の大きさが表れていて採用の本質を突いているが、この採用方法は普通の人には実行が難しい。ほとんどの会社は「手に負えない人」を採用しないため、社員以上のレベルの人は、その会社に来ない。能力の高い人物を採用できないのは、自分たちの器が小さいからだ。

 だから、実際には「器の大きい人物」が面接官にならない限り、その会社の平均以上の人材すら、確保するのが難しいのである。

 さまざまな会社で採用活動を見てきたが、応募者を見極めてやろうと言っていた面接官が、その実、応募者に見切られているなんてことは枚挙にいとまがない。

 したがって、採用活動をうまくやろうと思えば、まず「面接官の人選」が一にも二にも大事である。では、「器の大きい人物」をどのように判定すべきだろうか?

 私が少し前に手伝った会社も、面接官の人選に苦労した会社のうちの1社だった。

 その会社では伝統的に、チームリーダーと役員が面接官をしていたが、私が見る限り、有能な人物はそのうちのよく言って半分程度、残りは年功序列で、能力にかかわらずその地位に就いた人物であった。そこで私はおせっかいとは思いながらも、社長に言った。

私I:いまの面接官だと、なかなかいい人が採れないかもしれません。

社長X:うむ。それは知っている。今年は彼らの適性を確かめてから、面接官に登用する。

I:適性ですか? どのように確かめるのですか?

X:では一緒にお願いします。ちょうどこれから適性を確かめる面談だから。

 そう言って私をその場に残した。10分後、1人の役員が入室した。

X:今日は、採用の面接官をやってもらうかどうか、少し考え方を聞きたくて来てもらった。いまからする質問に答えてほしい。

役員Y:はい。なんなりと聞いてください。

 私は、「どんな質問をするのだろう?」と、期待していたのだが、意に反して、社長は役員にあたりさわりのない、ごく当たり前の質問を投げかける。

X:どんな人を採りたいか?

X:応募者の何を見るか?

X:どんな質問をするか?

 役員もそういった質問は想定済みらしく、あたりさわりのない、模範的な回答をする。私は「どうしてこれで適性が分かるのだろう……」と、不思議だった。

 そして、20分程度の時間が経ち、社長が言った。

X:では、最後の質問だ。誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身のまわりで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ。

 役員は不思議そうな顔をしている。

Y:自分より優秀……ですか?

X:そうだ。

 役員は苦笑しながら答えた。

Y:まあ、お世辞ではないですが、社長、あとは◯◯さんです。

X:◯◯さんか、なるほど。まあ、役員のなかでは確かに頭抜けて優秀かもしれないな。ちなみに理由を教えてくれないか?

 役員が理由をひと通り述べると、社長は「……うん、ありがとう」と言い、面談は終了した。その後、2人ほどの役員とリーダーに同じような質問をし、4人目の面接となった。

 彼はリーダーであったが、次期役員候補と目される人物であった。最初の役員と同じような質問が社長から投げかけられたあと、最後のお決まりの質問となった。

X:では、最後の質問をいいかな? 誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身のまわりで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ。

 そのリーダーは、ちょっと考えていたが、やがて口を開いた。

リーダーK:まずAさん、洞察力と、営業力が素晴らしいです。続いて、Bさん、営業力はあまりないですが、人望があり、人をやる気にさせる力がずば抜けています。リーダーのCさん、現場を任せたら社長よりもうまいでしょう……すみません。そして、うちの部のDさん、新人なんですが、ハッキリ言って私よりも設計する力は上です。

X:ずいぶんと多いな。

 社長はニコッと笑ってリーダーに言った。

K:当たり前です。皆私よりもいいところがあり、そして、私に劣るところがある。

X:分かった。ありがとう。

 リーダーが退出し、私と2人きりになり、社長は誇らしげに言った。

X:というわけで、面接官はアイツに決定だな。

I:そういうことですか……。

X:彼は器が大きいんだ。私よりも上かもな。私はまだまだ変なプライドがあるからな。

I:確かに、面接官に変なプライドは邪魔ですね。

X:そうだろう。「身のまわりで、自分より優秀な人間を挙げてみよ」と言われて、挙げることのできた人数が、その人間の器の大きさだよ。

I:なるほど……。

X:今年こそ、採用をきちんとやりたいな。まあ、彼に任せれば大丈夫だろう。

 そして、社長の予想通り、そのリーダーは素晴らしい人物を数多く採用した。時には応募者に教えを請い、時には応募者を説得し、八面六臂(はちめんろっぴ)の素晴らしい活躍だったそうだ。

 ほんとうに優れた人物は、他の人の優れたところもよく分かるという。

 世界の富を独占した鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーの墓誌にはこう刻まれているそうだ。

 「自分より優れた者に協力してもらえる技を知っている者、ここに眠る」

 最高の大きさの器を持つ人物の言葉だ。

1◆仕事ができる人が見えないところで必ずしていること◆

まわりの人の自分より優秀なところを挙げられる、器の大きさがある


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