古い世代とは異なる価値観を持つZ世代。上司として彼らをマネジメントしていくには、どのようなことに注意していくべきなのだろうか? Z世代を率い、強い組織を作っていくためにリーダーがやるべき3つのこととは。
経営コンサルティング事業を行う株式会社Nomoto Consultingで代表取締役を務める野本理恵氏。経営コンサルティングのみならず、SNS運用代行事業や社員育成のための研修事業なども行っており、年商80億〜100億の中小企業をメインに、180を超える企業をクライアントとして抱えている。この野本氏がライブ配信で開催しているITmedia エグゼクティブ勉強会に登壇。「勝ち抜ける組織をつくる リーダーがやるべき3つのこと」をテーマに講演を行った。
勝ち抜ける組織をつくる リーダーがやるべき3つのこととはなんだろうか。野本氏は「育成」「採用」「自分磨き」だと話す。
まず、育成については、「育てる」という言葉を「(会社の)環境」「(上司の)行動」に分けて考える必要がある。「環境」というものは、1人の意志のみで整えられるものではなく、経営判断が必要となることが多々ある。
社員の育成を重視するという視点から見ると、企業の経営判断として「キャリアの見える化」や「働き方改革」を進め、「給与水準」を上げていく必要がある。これらの環境をしっかりと整えて行かなければ、Z世代の若い社員はどんどんやめていってしまう。転職を前提にキャリアプランを考えている若い社員にとっては “あってあたり前”のものなので、これらの環境が悪ければ、どれほど育成をしようとしても社員は育たない。
野本氏によると、育成のために「(会社の)環境」にとって必要なのは、まずは「評価制度」「年間休日」「同業他社の10%上の給与」だという。
「若手社員に向き合って、彼らを見てスモールステップで評価していくことが必要です。また年間休日も少なくとも120日を超えないと、若い人材に訴求力はありません。120日プラス特別休暇やフレックス制度など、127日くらいの休日が必要でしょう。そして、給与も同業他社より10%高くするべきです。会社の環境を若手人材に魅力を感じさせるようにするには、最低限でもここまでできている必要があります」(野本氏)
会社の「環境」を整えることに加えて重要なのは、若手社員を育成する上司の「行動」で、これは「部下との関係づくり」である。「この人に評価されたい」と部下に思われるような上司にならなくてはいけないのだ。
では、具体的に上司はどう行動すればいいのだろうか。部下に気を使って言葉をかけているという人は多いかもしれない。しかし、下記のような言葉は、かえって若手社員をイライラさせる可能性があるので要注意だ。
「ダイジョブ?」
「説明、意味分かった?」
「自分で考えて行動しよう」
「言われたとおりにやってみよう」
「いつでも相談して」
「調子どう?」
若手社員には、表面上だけで部下を気遣っているような言葉は響かず、むしろ苛立ちの原因になってしまう。マニュアルに沿って全員に対応するのではなく、一人ひとりを見て、対応していく必要があるのだ。野本氏はこれを「個人のキャリアや目標に寄り添う“パーソナルトレーナー育成”の時代」と表現している。
「今の若い世代はとても敏感で、思考力が高く、相手の気持ちを察する能力に長けています。そして、相手の“個”を尊重する世代なので、自分の“個”も尊重してほしいと考えています。彼らは、先輩や上司を仕事のスキルや成績ではなく、“自分をちゃんと見てくれているかどうか”で判断します。尊敬する上司、この人に評価されたいと思う上司になれるかどうかは、ここにかかっています」(野本氏)
では、こういった若手社員を育成するには、どのような対応をしていけばいいのだろうか。野本氏は、「スモールステップで成果を見える化」していくことが重要だという。つまり、昔のような大きな目標を設定し、その目標達成までの手段は個人に任せるというような放置型ではなく、ステップごとに細かく指標を設定し、それを積み上げて、最終目標を達成していくという方式だ。
「ちょっと頑張れば次の目標を達成できる、というようにスモールステップで目標を刻むことによって、成果を細かく見える化できます。最終的な目標が達成できなかったとしても、本人たちがどこでつまずいたのかが分かります。最初からつまずいているのか、クロージングができていないのか、一人ひとりの成果を刻むことで、“あなたの課題はここにあるから、ここを改善していこう”と、課題を明確にして伴走することができます」(野本氏)
この“スモールステップ”とは、公文式学習法でも取り入れられている考え方だという。繰り返しプリントを解くことで、生徒自身が問題の解き方に気付き、次のステップに進んでいくのだ。今の若手社員には、こうやって細かく自分を見てくれていると思えることが大事なのだ。
「ある企業では、1人のリーダーにつき3人の社員という小さなチーム制にして、毎週1枚の進捗管理シートをチェックしながら1on1を行っています。1人当たりの面談時間は、10分です。今の若い人たちはYouTubeやSNSのショート動画に慣れているので、長く拘束されることを嫌います。月に1回1時間の面談を行うより、週に1回10分、1回ごとの時間は短くてもたくさん接触することの方が大事です」(野本氏)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授