AI時代に求められるデータドリブン経営 大事なのは「顧客理解」ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

顧客行動を、購買プロセスや財務データ、リピート状況などから多角的に細かく分析し、理解することで、ターゲット顧客が喜んでくれる施策を考え、実行している。

» 2024年04月18日 07時04分 公開
[榊淳ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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『DATA is BOSS 収益が上がり続けるデータドリブン経営入門』

 例えば、あなたが頻繁にサイトを利用するヘビーユーザーだったとします。私たちはあなたの好みや方向性を過去の利用データから熟知しているので、次にサイトを訪れてくれた際には、ユーザーの好みを色濃く反映した利用先を提案します。

 他方、年に数回利用するライトユーザーや新規ユーザーには、あえて全顧客に人気が高い“most popular”を重視して利用先を提案します。

 これは、私が社長を務める一休が実践しているデータドリブン施策の一例です。顧客行動を、購買プロセスや財務データ、リピート状況などから多角的に細かく分析し、理解することで、ターゲット顧客が喜んでくれる施策を考え、実行しています。

 このように、ビジネスのあらゆる局面で、データ主導で「誰に何をするか」の意思決定をする「データドリブン経営」を実装してきたことで、一休は売上10倍、営業利益率5割超を達成することができました。

 私が使っている「データ」という言葉は、ほとんど「顧客」のことを指しています。顧客は、サービスを利用しながらいろいろなことを教えてくれます。その行動データにこれ以上ないほど分け入っていくことで顧客を理解することができ、顧客に貢献する次の一手を見つけることができるのです。経営者にとっては、この「顧客を理解すること」こそが、最も大事だと考えています。

 GAFAMを中心とした世界の最先端企業の経営層は、データをよく理解している経営者が主流になっています。これらの企業では、インターネットの黎明期からデータの持つポテンシャルに着目し、データをビジネスに生かすことを最優先事項と位置付けてきました。そのため、データ分析に特化したデータサイエンティストやエンジニアを多く抱え、これらの専門家たちが、顧客行動データを分析し、より良い顧客体験を実現することで、結果として社会に大きな変革をもたらしています。

 近年では、AI(人工知能)が新たな産業改革を牽引すると想定され、AIのエネルギー源である「データ」が石油と同じような価値を持っていることに世界が気付き、行動しています。米国だけでなく、欧州、中国、インドなどでも、データのビジネスへの活用が進んでいます。

 一方で日本では、「当社もデータを重視している、データドリブンを実践している」という企業も、かなり浅いところで手を引いている印象があります。データ分析の踏み込みが中途半端だから、本当はもっと深い気付きが得られる宝であるにもかかわらず、そのデータが秘めている真価を引き出し切れていないケースが多いのです。これは、とてももったいないことです。

 かく言う一休も、経験や感覚で事業を展開していた時代がありました。

 2000年に「高級宿」に特化した宿泊予約サービスを開始した一休は、2005年に当時最少人数で東証マザーズ市場に上場、2007年には東証一部に上場と、花開きつつあるインターネットサービスの企業として成長を期待されていました。しかし、周囲の同業他社が大きく成長する中で、一休の事業は伸び悩み、市場の評価は厳しく、株価は低迷していました。

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