顧客の声への対応力が新たな差別化の“鍵”にITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

製品やサービスそのもので勝負できる時代は終わりを告げつつある。求められているのは、顧客の要望に対して、より迅速かつ的確に対応を可能にする業務プロセスの変革能力である。そのために、自社の業務を把握できる仕組みの整備が急務となっている。

» 2009年01月16日 14時14分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

過ぎ去りつつある付加価値競争時代

 過去、企業は製品やサービスに独自の価値を付加することで、他社との差別化を推し進めてきた。だが、市場がこれほどまで成熟する中にあって、もはや付加価値では差別化が困難になっているのが実情だ。実際に、機能やデザイン、スペックで明らかな差別化を実現できている製品やサービスは現状、皆無に等しい。

 そこで今、企業に求められているのが企業活動による差別化だ。具体的には、顧客を長期にわたって自社につなぎ止めておくべく、価格や納期、品質など、製品やサービスにまつわる顧客の要望に対して、より迅速かつ的確に対応できる業務プロセスを実現することが急務となっているのである。


 アイティメディアは2008年12月11日、グローバル経営時代において勝ち残るための経営とIT戦略をテーマとした経営者向けセミナー「第7回 ITmedia エグゼクティブセミナー」を開催。同セミナーで講演を行ったソフトウェア・エー・ジーでシニア・コンサルタントを務める高野忍氏は、顧客対応力の向上においてビジネスプロセスのパフォーマンス測定が重要になるとした上で、次のように強調した。

 「ビジネスの現状を把握できなければ、業務を改善できたかどうかも判断することは困難。そこで対応力の向上に向け、まずは顧客の声を基に改善ポイントを定義した上で、対象となるビジネスプロセスの現状のパフォーマンスを把握する作業から始める必要があるのだ」(高野氏)

シックスシグマで変化に対応可能な改善を

ソフトウェア・エー・ジーの高野忍氏 ソフトウェア・エー・ジーの高野忍氏

 現状のパフォーマンスを把握し、改善ポイントと照らし合わせれば自ずと業務課題が明らかとなる。次はその改善作業だが、高野氏によると、この段階では継続的な業務改善手法である「シックスシグマ」が大いに活用を見込めるという。シックスシグマは経営に対する財務効果に加え、顧客の声も重視する改善手法であり、数値に基づいた検証をベースに作業が進められることから、客観的な数値によって現状の把握から課題の発見、改善まで一貫して行うことができる。しかも、DMAIC(Define-Measure-Analyze-Improve-Control)活動とDMADV(Define-Measure-Analyze-Design-Verify)活動を通じて、業務改善と新プロセスの構築作業を継続的に実施することができる。

 「業務課題は複数の問題が複雑に絡み合っていることが多く、一度にすべての問題を解決することは現実的に極めて難しい。また、ビジネスや顧客ニーズは今後も変わり続ける。だが、シックスシグマを用いることで継続的な顧客ニーズへの対応が可能になるのだ」(高野氏)

 では、パフォーマンスの計測は具体的にどのように行えばよいのか。この点に関して高野氏はサイクルタイムをはじめとした「時間」と処理件数などの「インスタンス(伝票)数」の2つに着目すべきと説明する。これらの指針を組み合わせることで、一定時間あたりの処理件数やエラー発生率、平均サイクルタイムなどを算出することが可能。これらを必要に応じてKPI(Key Performance Indicator)と定義し、モニタリングすることでパフォーマンスの変化を把握することが可能になるというわけだ。

 さらに、ビジネスプロセスやKPIに対してルールを設定し、ルール違反が発生した場合にはリアルタイムに通知できる仕組みを整えれば、顧客満足度を低下させる要因にいち早く対策を講じることができる。

 「継続的なプロセス改善を通じて得られたKPIの情報を活用すれば、ITを活用した業務の自動化や、問題が発生するタイミングの予測、ひいては問題の未然防止を図ることもできる。ただし、そのためには非常に多くのKPIを分析することが求められ、現実的には実施はなかなか困難。そこで『webMethods BPMS』を利用すれば各種のKPIを自動的に収集・分析できるため、こうした高度な活用の仕組みを整備することができるのだ」(高野氏)

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