「いかにベーコンエッグのポークの意識を持たせるか」――東京海上日動システムズ・島田常務

重要性は感じているものの、全社員にリスク管理を徹底させることに困っている企業は少なくない。過去の苦い経験からリスクに対する改革を行った東京海上日動システムズは「当事者意識」の必要性を強調する。

» 2009年04月27日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 調査会社のガートナー ジャパンは4月20日、セミナーイベント「アウトソーシングサミット 2009」を開催した。ゲスト講演した東京海上日動システムズの島田洋之常務取締役は、企業におけるリスク管理について「一人ひとりが当事者意識を持ち、各人がPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回し続けることが重要だ」と強調した。

東京海上日動システムズの島田洋之常務取締役 東京海上日動システムズの島田洋之常務取締役

 東京海上日動システムズは、東京海上日動火災保険をはじめ東京海上グループのIT戦略の中核を担う。現在、約50万台の代理店向けシステムと約3万台の社内システムの開発、保守、運用などを一手に引き受ける。それぞれのシステムは月間1億件のトランザクションが発生する大規模なシステムであるため、「リスクの正しい認識と評価が不可欠」だと島田氏は話す。

 同社では、2000年にオープン系システムの相次ぐ導入に伴うトラブル、特に運用の品質面でのトラブルが多発した。10月にすぐさまSLA(Service Level Agreement:利用者にサービス品質を保証する制度)を導入して業務を見直し、品質向上や内部統制を推し進めてきた。

 加えて、社員の意識改革にも着手した。同社を含め多くの企業のIT部門は、サービスを提供し続けることに対してはプロ意識を持つが、サービスを管理することは苦手だという。島田氏は「きちんとやっています、頑張りますと言うだけでは業務の役に立たない。(業務に対して)常に自己責任や説明責任を持たなければならない」と指摘する。

 社員にリスク管理を徹底させるにはどうすればいいのか。島田氏は「ベーコンエッグ」を例に説明する。

 「ニワトリと豚(ポーク)がいたとしよう。ベーコンエッグをつくるのに、ニワトリは卵を提供すればいいが、ポークは死ななければならない。関係者全員がいかにポークの意識、すなわち現場の当事者意識を持つかが重要である」(島田氏)

 全員が危機意識を持ってリスク管理に携わり、一人ひとりがレポートをつくる段階からPDCAサイクルを回すことで、質の高い顧客サービスが実現できたという。従来のようにコンピュータに向かってではなく、顧客へのサービスに目を向けてシステム運用をとらえることが可能になり、ビジネスに役立つITサービスを提供しているという意識が社員に芽生えた。

 「現場を知らずにシステムはつくれない。顧客を深く理解している点は、ベンダー企業やアウトソーシング会社には絶対に負けない」(島田氏)

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