「ポーター賞」をご存じだろうか。これは独自性のある優れた戦略を実行している日本企業を対象にした賞で、2001年に一橋大学大学院が設立した。その名は競争戦略論の第一人者であるハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授に由来している。日本にはTQM(総合品質管理)に関して功績のあった民間団体および個人に贈られる「デミング賞」が存在しており、ポーター賞は競争戦略分野でのデミング賞とも言えよう。
直近の2008年度には、有機野菜などの健康食品をインターネット販売するオイシックス、バネを製造・販売する東海バネ工業、手術用縫合針などを開発するマニーが受賞している。
アイティメディアが7月23日に開催した企業経営層向けのセミナー「第8回 ITmedia エグゼクティブ フォーラム」において、ポーター賞の運営委員である一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美准教授が、日本発という視点で世界に勝つための競争戦略について講演した。
企業が競争戦略を立てる上で走りがちなのが、他社より上手なやり方でベストを目指すことである。競争優位に立つためには、自社が顧客に提供できる価値を見極めて何をやるべきかを検討し、ベストではなくまねできないユニークな戦略を打ち出すべきであるという。大薗氏は「競合と同じ競争の軸で戦おうとしてはならない。例えば、短距離走や幅跳びといった枠にとらわれるのではなく、双方を組み合わせた新しい競技をつくっても良いのだ」と話す。
たとえ同じ業界であってもユニークな戦略をとることによって、それぞれの企業が新たなポジションを創造することができる。例えば、これまで医薬品業界でポーター賞を受賞したのは、武田薬品工業(2002年)、大洋薬品工業(2005年)、マルホ(2007年)である。注目すべきは同じ業界でも3社はまったく異なる戦略をとっていることだ。武田薬品は生活習慣病に関する領域で、大洋薬品はジェネリック医薬品(後発医薬品)で、マルホは皮膚科・外用剤で、それぞれ優れた製品あるいはビジネスモデルを開発し利益を上げている。
「業界は複数の頂上がある連峰であるため、勝ちパターンは複数あるのだ。どんな業界でも決してあきらめてはならない」(大薗氏)
ユニークな競争戦略について、大薗氏は良品計画(2007年受賞)を具体例に挙げて説明した。同社のユニークな点は「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」という価値提案に徹した商品企画である。コストを抑えるために素材の選択や工程の見直し、包装の簡略化に注力する一方で、Webや電話などを通じて集めた消費者のアイデアや、世界の生活文化や歴史に根付いた日用品などを商品開発に反映するプロジェクトを立ち上げ、顧客満足の向上を図っている。「足なり直角靴下」や「透ける付箋紙」「体にフィットするソファ」などはそこから生まれたヒット商品だ。
こうした戦略を実行する上で同社が心掛けているのは、製品にブランド名をつけない、過剰な値引きや宣伝販促をしない、2DKか3DKの家にあるような日用品しか扱わないなど、やらないことを明確にし、そのコンセプトを守り続けている点だ。コンセプトがぶれるのを防ぐために経営層と同じ権限を持つアドバイザリーボードを設置し、事業内容を定期的に確認している。
ビジネス成長のためには、戦略を貫き通す強い意思が経営トップに必要だと大薗氏は強調する。
「市況の悪化により何とか売り上げを伸ばそうと奔走する企業は多い。しかし、そうしたときこそ戦略を揺らがせてはならず、自社らしさにこだわるべきだ」(大薗氏)
「海外で通用しないブランドは日本でも駄目」――良品計画・松井会長
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この数日間で、大手各社経営者の年頭所感が発表された。私は自動車工業会、情報通信ネットワーク産業協会それぞれが 主催する賀詞交歓会に毎年出席しているが、今回の会場で各社トップが発表する年頭所感には、これまでにはない“改革”や“挑戦”といった意気込みをひしひしと感じた。
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