ファンケル 中島理人化粧品カンパニー 副カンパニー長【対談連載】石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/3 ページ)

» 2009年09月16日 08時30分 公開
[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]

「不」の解消がビジネスチャンスに通じる

 世の中の不を解消するというのがファンケルの企業理念の1つです。創業者の池森賢二さんのお言葉を借りれば「不安を安心に」「不快を快適に」「不満を満足に」変えるとあります。「安心・安全・やさしさ」を追求するファンケルでは、どこかに不はないかを常に探ります。

 創業時のお客様の不は何かといえば、一般の化粧品の中に入っている防腐剤、石油系の界面活性剤、鉱物油、香料、殺菌剤などです。それを徹底的に取り除くことでファンケルはその名を世の女性に知らしめました。ファンケルの当時のパッケージは非常に小さなものでした。防腐剤を使っていないので、新鮮なうちに届けて使い切らなければいけなからです。店舗に置くこと自体、時間的に無理があるので、工場で作って直接顧客に届ける通販がチャネルとして選ばれたのも自然の成り行きでした。

 容器も特許を取った密封式のものが選択されました。すぐなくなる化粧水なんて使いにくいと言われても、元々、肌のトラブルという不を解消したいというターゲットユーザー向けに作られたものなのです。その不の解消することが先決です。パッケージには、ほかの化粧品には入っていない製造年月日が入っています。

 お客さまにはまだ不があります。すぐに購入したい、近場で買いたい、そんな不に応えて、通販でありながら店舗という新しい取り組みを始めました。化粧品は、試してみないと分からないものです。約30年前から、通販でお試しセット販売を始めました。開封して使用して、そして返品しても構わない。今でいうクーリングオフを1996年から無期限にしました。

 通販では店舗で買うより送料がかかってしまうという不があります。そこで送料を撤廃しました(現在は、1回の購入金額が3000円以上で送料無料)。今ほど宅配便サービスが進んでおらず、留守にすると再配達が難しかった当時、置き場所指定という配達方法を実施しました。ガスボックスの中とか、マンションの管理人に預けるというものです。留守にしていなくても、子育ての真っ最中に邪魔されたくないという不にも応えた形です。

 ファンケルの株主は同時にお客さまであることが多いそうです。総会に人が来ないと嘆く企業が多い中、横浜アリーナで約4000人を集めた株主総会では、ファンケルの化粧品や健康食品の新商品などを実際に手にとって確認できたり、肌診断や骨密度を測るサービスを提供したそうです。株主優待があるにもかかわらずお土産もついてくる総会では、株主の方々に、よりファンケルのファンになってもらうのと同時に、株主の声を集めて顧客ニーズを探ります。

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