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» 2009年11月12日 08時15分 UPDATE

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:海外で成功をつかむキーワードは「標準化」――早稲田大学・岩崎氏 (1/2)

国内での過当競争ばかりに目を奪われがちな日本企業。売り上げを伸ばし企業経営を持続するためには、成長が期待できる海外市場に打って出るしかない。日本はいかなるグローバル戦略を持って、国際競争力を高めるべきだろうか。

[伏見学,ITmedia]

 「ガラパゴス化」と揶揄される日本の携帯電話。各メーカーがわれ先にと高機能、高品質を追求した結果、ガラパゴス諸島に生息する生物のように独自の進化を遂げて世界標準から掛け離れてしまったゆえんである。これは携帯電話に限った話ではない。デジタルテレビ放送やカーナビゲーションシステムでもガラパゴス化が懸念されているのだ。

 少子高齢化などの影響で市場の縮小が避けられない中、日本企業が海外に売り上げの軸足を移していくのは自然の成り行きである。特に携帯電話について、急成長を遂げる新興国における需要は著しく高い。国連貿易開発会議(UNCTAD)の調査によると、2008年末時点で1人1台を超える契約数を記録している。これは先進国と遜色ない数字である。

 こうしたビジネス環境において、日本企業はいかなる戦略を持って海外の消費者を取り込んでいくべきだろうか。早稲田大学 電子政府・自治体研究所次長の岩崎尚子氏に話を聞いた。


不況脱却に向けたICT活用

「通信産業における新興諸国のプレゼンスが高まってきた」と話す早稲田大学 電子政府・自治体研究所次長の岩崎尚子氏 「通信産業における新興諸国のプレゼンスが高まってきた」と話す早稲田大学 電子政府・自治体研究所次長の岩崎尚子氏

ITmedia 先月スイス・ジュネーブで開かれた通信関連の展示会・フォーラム「ITU TELECOM WORLD 2009」に出席されたと伺いました。

岩崎 TELECOM WORLDはITU(国際電気通信連合)が3年ごとに開催する、“通信のオリンピック”と称される通信関連の国際イベントです。2006年に香港で開催された時までは展示会が中心でしたが、今回はフォーラムがメインで、国際機関の事務総長クラス、各国の元首、大臣をはじめ公的機関の責任者が招待され、スピーカーとして登壇しました。今回の特徴は中国、韓国、中東、アフリカ諸国のプレゼンスが高まってきた点にあります。中国はLTE(Long Term Evolution)、WiMAXの覇権をかけた展示が目に付きました。また、通信事業分野の世界の勢力図を塗り替える市場を有するアフリカ諸国の企業の活動が活発になってきていることも事実です。

 今回のハイライトは、世界同時不況からの脱却を目指す上でのICT(情報通信技術)の貢献、情報セキュリティと個人情報保護の強化、デジタル経済の進展、災害に強い防災通信、環境に優しいグリーンITなどがテーマとなり開催されたことでしょう。先端製品やシステム分野の展示では、次世代ネットワーク、LTEとスマートフォン、WiMAX、クラウドコンピューティング活用の省力型データセンターなどが注目を集めました。

 グリーン技術で先行する日本は、ICTが環境にもたらす業務効率化のメリットと、光熱費やシステム運用費などのITコストの増加やサーバの排熱といったデメリットの二極化を解決するため、低電力装置の開発などでリードしています。高い技術力によるサービス提供と同時に、環境やCSR(企業の社会的責任)に関しても精力的に取り組む日本企業の優位性は世界で突出しています。

標準化抜きには語れない

ITmedia グローバルにおける日本の通信業界について、どのようにお考えでしょうか。

岩崎 例えば、日本の携帯電話産業は成熟期に入っています。新しい携帯電話の通信規格であるLTEなどの技術を採用したいわゆる第3.9世代携帯電話や、第4世代の研究開発は一歩リードしています。世界の標準化という面では海外が追随している状態です。

 海外で成功するためには、標準化抜きには語れません。海外のユーザーがどこまで日本のサービスやコンテンツを求めているかによりますが、海外市場に入り込むためには、例えば、インドではインドに適した文化、中国では中国に適した文化を考慮すべきです。国ごとにニーズは異なりますしサービスの仕方も異なります。日本企業が海外進出する上では、法律、言語、文化、社会、国情などを理解し、消費者のニーズを適切に見抜くことが必要です。

 サービスや技術は刻々と変化しますし、求められているものも日々進化します。今回、携帯電話各社の社長の話を聞いていても、そこに先見の明を持って取り組んでいるかどうかが重要だと感じました。世界のニーズとかけ離れてもいけないし、先を行き過ぎてもいけません。バランスをうまく取ることがカギになります。


ITmedia 日本のメーカーは技術偏重になり過ぎてその戦略を見誤っていることはありますか。例えば、携帯電話によるテレビ電話は10年ほど前から存在しますが、いまだに普及していません。

岩崎 日本には携帯電話でユーザーが欲しい情報をいくらでも取り出せる、いわゆるコンシェルジュ的なサービスや、GPS機能を活用した高品質なサービスが多く、ユーザーの利便性も高いと言えるでしょう。しかし、海外展開する上ではそれぞれの国の文化や国民に必要性が高いものかどうかが重要です。

 こうした質量を満たすサービスの提供に尽力しているNTTドコモやKDDIなどの日本企業のプレゼンは、日本企業の存在感を十分にアピールした素晴らしいものでした。「グローバライゼーションとローカライゼーション」のセッションに登壇したNTTドコモの山田隆持社長は、海外展開を進める上での課題として、各国の文化に適合させたサービスのローカライゼーション化の必要性に触れ、顧客のニーズをつかみ、適したサービスを提供することが求められる中で、国状や文化によってマーケットニーズが異なることを通信事業者は理解すべきと強調されていました。


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