「ほかしのおーじさま」――むかしあって、これからもおこるおはなしビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/3 ページ)

» 2010年02月04日 08時00分 公開
[マネー・ヘッタ・チャン(作家),ITmedia]

きれいなバラにはとげがある

 特にアキール*2というダヴァイ政府系の不動産開発会社がすごい建物をどんどん立てる計画はひときわ魅力的でした。

 ブルジュ・ダヴァイという世界一高い超高層ビル、ダヴァイランドという名の世界最大のテーマパーク、ハイトクポリスという世界初の水中ホテル*3、The NINE PLANETS(ザ・ナインプラネッツ)という太陽系の惑星をモチーフにした9つの人工島を作る計画などなど。

 そういった壮大な計画を聞いたフエーテルは、自分もそこで一山当てたいと、いてもたってもいられなくなり、銀行からお金を借りてそれらの事業に積極的に投資することにしました。しかしフエーテルが事業に携わってからしばらくすると、それまで右肩上がりだった売り上げが下がり始めました。不安に思ったフエーテルはバレッジさんに相談しました。

 するとバレッジさんは、「たまたま調子が悪いだけだよ。むしろ同業が苦しい今こそ頑張り時だ。フエーテルさん、どんどん事業資金を借りて、同業を駆逐するべきだよ」と言います。

 そういわれたフエーテルは、銀行に相談してバレッジさんオススメの事業に再投資を積み増していきました。でも、売り上げは全然下げ止まりません。むしろ下げるペースがどんどん速まっていく有様です。

 フエーテルは、バレッジさんの言葉を信じて、延々と資金をつぎ込んでいきましたが、ついに銀行から借りられなくなり、それどころか銀行から借りたお金も返せなくなってしまいました。すると、銀行は債務の返済にあてるため、フエーテルの持っていた事業を差し押さえ、売り払ってしまいました。

 ちょうどそのころ、フエーテルと同じように、バレッジさんに相談していたほかの事業家も銀行に事業を差し押さえられ、倒産が多発。 連鎖倒産でダヴァイの経済は大混乱。経済水域はどんどん下がって、いつ下げ止まるか分からない大恐慌状態です。

 その余波でブルジュ・ダヴァイの世界一高い超高層ビル計画は基礎だけ建てたところで工事が無期限中止。 造りかけのビルはまるでダヴァイの墓標のように、世界最大のテーマパークになるはずのダヴァイランドの敷地は世界最大の空き地に、ハイトクポリスは世界初の水中ホテルのはずが世界初の巨大な魚礁に、The NINE PLANETS(ザ・ナインプラネッツ)という太陽系の惑星をモチーフにした9つの人工島を造る計画は、島を造ったところで工事が無期限中止になり、いつのまにか波の浸食で島がなくなってしまいました。

 バレッジさんのいうことは、まったくあてにならないと文句を言いに行ったフエーテルでしたが、すでにバレッジさんは行方知れず。風のうわさによると、本人も事業で大損して、せっかく積み上げた財産をすべてなくしたどころか、莫大な負債を被って破産してしまったということでした。

 フエーテルの元には、伯父様のまったく当てにならなかったレポートだけがただ残りましたとさ。

 今日も誰かがフエーテル、因果の歴史がまた1ページ…。


*2 お金が借りられなくなって仕事に飽きてしまったのは残念です。

*3 背徳ポリスじゃないですよ、念のため。でも富豪が美女を囲むための場所なんだろうけど。

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