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» 2010年02月26日 08時15分 UPDATE

生き残れない経営:非を認めない経営者という人種 (1/2)

「俺はここまで上り詰めたんだ!」という実績によって自信過剰になり、周囲の助言に耳を傾けない経営トップが何と多いことか。企業にとっては大迷惑である。

[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 企業のトップや経営陣という人種は,そこまで上り詰めた実績があるから自信過剰であり、年もそれなりに取っているから、仮に自分の経営のやり方が間違っていても、周囲の意見をなかなか聞き入れない。いや、そもそも自分の経営が間違っているとは露にも思ったことはない。彼らに進言できるのは、株主か社外取締役(経営実態を把握していない上に立場から考えてあまり期待はできないが…)、あるいはコンサルタントであるが、機会は極端に少ない。従って、間違ったままの経営が続く。企業にとっては悲劇この上ない。

 彼らは、ほかの企業の社長などが立場にふさわしくない言動をするのを見て反省するかも知れない。しかし、それさえも別世界の出来事として無視する傾向が強い。筆者は、自分の非を他人事としてとらえる会社役員を何度も目撃している。

 ある事例を紹介しよう。某Z社の人事異動は常務会で最終決定し、その後のトラブル発生を防ぐため、異動当事者への示達、社内への公表,社外への公表という手順を決めてある。日ごろよりマイペースなA常務取締役は、今回も異動当事者への示達が遅れ問題を起こした。

 関係者の苦情を聞いたB取締役は、次の役員会議で機会を見計らって、「人事異動の際の示達・公表の手順が守られない場合があり職場に混乱をきたしている。役員はお互い注意すべきだ」と発言した。すると、すかさずAが「そうですね、そういう例を見掛けます。お互い注意しないと社内秩序が守れません」と応じた。Aが秩序を乱している張本人であるのにもかかわらず、自分のことを指摘されているとは気付いていないのだ。トップや役員のひとりよがりは、ことほど左様に絶望的である。

半年も部長室にこもる

 一方、トップや経営陣が他山の石としてわが身を省みる一助となることに望みをかけて、筆者が実務やコンサルティングを通じて接した実例を紹介する。

 電気メーカー大手のC取締役事業部長は、一見豪快なタイプだ。声も動作も大きく、風貌も強面なので、いかにもささいなことにこだわらず、大英断を次々に下すという印象が持たれていた。

 しかし、実際は違った。本社主催の予算会議、経営会議に向けて、Cはその1カ月ほど前から事前勉強を始めるのだ。そのこと自体は問題ないが、事前勉強の間は事業部長室に閉じこもって、関係部課長に次々と資料を作らせ、来訪者を一切シャットアウトする。本社会議の当日、Cは膨大なファイルを何冊も抱えて勇躍して出かける。常務取締役以上が出席する本番会議では、事業部長らが発表のために入れ替わり立ち替わり会議室に入るが、出番を待つCは、落ち着きなく廊下やトイレを行ったり来たりする。いざ本番となり、Cが社長からの質問に答えようと膨大なファイルをめくっている間に、ほとんどの場合、次のテーマに進んでしまうという、笑うに笑えぬ場面を生ずる。

 Cは社長に対して業務日報を欠かさず書き、社長指示には絶対服従しているから、社長の受けが良い。しかし、常務会での大会議が年に6回ほど開催されるから、1年の半分は部屋に閉じこもっていることになる。その間、事業部長の機能は停止するわけだ。

 Cは、ピーター・ドラッカーが指摘する「社内ばかり歩き回り」、「間違った安心感に陥って」いるのだ。「外を歩き」、社外の変化を知らないと時代に置き去りにされる(「未来企業」ダイヤモンド社)。Cも、それを評価する社長も失格だ。彼ら自身、永遠に気付かないだろう。

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