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» 2010年04月07日 08時15分 UPDATE

藤田正美の「まるごとオブザーバー」:危機感 (1/2)

郵貯、簡保の限度額が引き上げられる。すでに巨額のマネーを集めているにもかかわらず、なぜさらに拡大を目指すのか。

[藤田正美(フリージャーナリスト),ITmedia]

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 景気は明らかに底を打ったのだそうだ。景気の先行指標を見ていると確かにそう言えなくもない。しかしそんなに「楽観的」になっていいのだろうかという気がする。いま景気がよくなっているのは、対中輸出を中心とする輸出の回復と在庫の積み増しが要因である。ただ国内需要という意味では、企業の設備投資は冷え込んだままだし、消費者の財布のひもも固い。政府のエコ関連補助などに後押しされているうちはいいとしても、それがなくなったら、たちまち落ち込むことは目に見えているのではないか。

郵貯、簡保の限度額を増やしさらに膨らむ借金

 実際、自動車業界は補助金が出る9月末まではともかく、今年度の下半期は販売台数が落ちることを見込んでいる。家電でも同じことだ。政府支出による景気の下支えは、もちろんいつまでも続けられるわけではない。日本の場合、累積した借金の総額が先進国最悪と言われるほど大きく、予算でも収入のほぼ半分は国債で賄わなければならない国ではなおさらだ。

 だからこそ今、民主党政権に求められるのは、景気刺激のための政府支出と長期的な財政展望との間で、微妙なバランスを保ちながら国を経営することなのだが、現在の民主党政権はマニフェストを守るための財政支出ばかりに注意が向けられているような感じがする。

 そこに郵政民営化の見直しの方向性が明らかにされた。閣内で議論されていないとの横やりが入ったけれども、大筋は亀井大臣の思惑どおりに進むのだろうと思う。普天間問題で社民党が連立から離脱する懸念もある中で、国民新党まで失う余裕は民主党にはないからである。しかし現在の郵政見直し構想はあまりにも問題がある。

 第一に、郵貯も簡保も限度額をほぼ倍にするということだが、これではまた巨大国営金融機関の復活である。金融部門を手放したくないのは理解できる。郵便という「斜陽産業」でユニバーサルサービスを支えるためには、一方に何らかの収益事業が必要である、という考え方は欧州などでも議論されている。

 しかし日本の郵貯や簡保は今でも300兆円近い巨額のマネーを集めている(ちなみに三菱東京UFJ銀行でも預金といえば100兆円をわずかに超える程度。総資産でみても160兆円ぐらいの規模である)。

 既にこれだけの資金を集めているのに、なぜここで限度額を増やして郵貯や簡保に資金を集めなければならないのか。なおかつ、この見直しでは金融2社に対しては親会社が3分の1以上の株を保有することになっている。そしてその親会社の3分の1以上は国が保有する。その意味では、国の関与があるわけで、民間の金融機関に比べればそれだけ競争上優位にあると言ってもいい。そういう中での限度額引き上げは、中小の金融機関(ひいては亀井大臣が大事にする「地域経済」)に大きな打撃を与えることになるのではないか。

 郵貯や簡保が本来持っていた問題点は、資金の運用能力がない巨大国営金融機関が日本の資金の流れをゆがめてきたというところにある。ゆがめてきただけではない。こうした巨大な財布が国家の財政を支えてきた。

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