【第2回】イノベーションコンセプトの重要性イノベーションコンセプト入門(1/2 ページ)

「イノベーションコンセプト」の要素を決め、算数における四則演算(+/−/÷/×)を使い、イノベーションコンセプトを発想していくことが必要です。

» 2010年05月14日 13時02分 公開
[岩下 仁,ITmedia]

 米国学者&経営コンサルタントでもあるRobert L. Katz氏は、ビジネスマンに必要な3つのスキルを定義しています。Technical skill(技術スキル)、Human Skill(ヒューマンスキル)、そしてConceptual Skill(コンセプチュアルスキル)です。技術スキルとは、業務遂行上必要なスキルで、例えば会計士が持つ財務会計に関する知識などです。ヒューマンスキルとは、同僚と信頼関係を築くコミュニケーションスキルを指します。

 役職が上がるにつれ、身につけるべきスキルがコンセプチュアルスキルです。これは顧客のニーズを理解し、ビジネスの全体像を見渡し、構造化していくスキルです。「斬新さ」と「価値ある」もののバランスをとり、仕組みを端的に討議するスキルでもあります。

 イノベーションコンセプトを理解し、活用することは、このコンセプチュアルスキルの獲得につながります。イノベーションコンセプトを明確にし、端的に語ることで関連部署や関係者を動機づけ、かつ実行に結びつけます。「誰に」「何を」「どのように提供するか」を理解し、かつ変化に応じてイノベーションコンセプトの要素を調整していくことが成果を左右します。

イノベーションコンセプト要素を決める

 このイノベーションコンセプトの要素を決め、算数における四則演算(+/−/÷/×)を使い、イノベーションコンセプトを発想していくことが必要です。つまり各要素を足したり、引いたり、割ったり、または他の要素と掛け合わせたりすることで、他にはない、新しい価値を生み出す、イノベーションコンセプトを創り出します。以下にてイノベーションコンセプトマトリックスとします。

イノベーションコンセプトマトリックス

 「誰を」とはターゲットとなる顧客を指します。詳細要素を足し引きしたり、掛け合わすことで、顧客の単位を設定します。法人別個人別で組織をわけ対応するオフィスメーカーやパソコンメーカー、またはクレジットカードに見られるゴールド、プラチナ、ブラックカードなどの顧客を割り込みます。(÷割り算)また顧客のみならず、サービスを利用するユーザーも考慮する場合もあります。

 「何を」とは、顧客に提供する製品サービスや便益(ベネフィット)にあたります。製品サービスでは、数多くの掛け合わせが存在します。(×掛け算)シャープペンシルとボールペンで「シャーボ」、シャンプーとリンスを合わせて「リンスインシャンプー」などです。またシャンプーであれば量を増やして業務用にしたり、1日分のシャンプーとして販売されたりもします。(+/− 足し算/引き算)

 ベネフィットとは、顧客が製品サービスを利用する目的であり、主には利便性や時間の短縮、ノウハウや低価格などの獲得が挙げられます。例えば、アスクルは、名前が示すように注文した「明日来る」オフィス用品の販売を行うワンストップショッピングであり、オフィス用品購入における利便性の提供です。また電子機器製品などのB2B分野に目を向けると、金型通販のミスミや電子部品・半導体の通販サイトを運営するチップワンストップなども、ネット販売による製品購入の利便性を提供しています。

 「どのようにして提供するか」とは、ベネフィットや製品サービスを提供する仕組みです。特にネット技術の活用や提携パートナーとの協業により、顧客へより優れた価値を届ける仕組みです。また価格面での実現性も重要なパートになります。顧客への提供価格のみならず、その価格を実現する仕組みとなります。顧客へのベネフィット(価値)を提供できるのか、が問い掛けとなります。

 アスクルの例では、小売店と提携し(+足し算)、新規顧客の開拓と料金の徴収を提携の小売店が行い、アスクルはカタログ配布や受発注、在庫などの業務に専念しています。同時にオンラインでは、法人と個人に窓口を分け、お勧め機能など、販促サービスの拡充を行っています。(+足し算)

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