すぐに使える「二項対立」の視点ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

あなたの意見を通したいときは、対立している相手が問題としている点を解決しなければ前へは進めない。15の視点で捉えてみる。

» 2010年09月16日 08時15分 公開
[木山泰嗣,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。


 書店のビジネス書コーナーに行くと、「論理思考」や「ロジカルシンキング」をテーマにした本をよくみかけます。最近ホットな「話し方」とからめて、「論理的な話し方」といったテーマの本も多く出ているようです。また、本のタイトルやテーマにはなっていないものでも、ビジネス書というジャンルの本を読むと、さまざまなフレームワークをみかけます。マーケティングの4Pや、MECE(ミッシー)といったものです。

『究極の思考術―あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点15』

 こうしたフレームワークは、その分野では普遍性を持っているものが多く、有効に使うことができれば、実践的な武器になります。

 ただし、難点もあります。1つは、ビジネス書で知ったフレームワークは、それを覚えること自体で満足してしまう危険があることです。「単なる知識」にとどまり、「使える知恵」にならないパターンです。もう1つは、仮に使いこなすことができたとしても、使える分野が限られているため(たとえばマーケティングのみ)、広く応用できないことです。

 こうして多くのフレームワークは、まるで学生のころの試験対策のように、内容を知識として覚えることに意識が向けられてしまいます。結局「実際にはぜんぜん使えない」という結果に終わります。

すぐに使える究極のフレームワーク

 わたしども法律家は、ほとんどの人間が「究極のフレームワーク」を使うことで、紛争を解決しています。それが「二項対立(にこうたいりつ)」という視点です。

 裁判官・検察官・弁護士などの法律家は、なぜこのフレームワークを使うのでしょうか。それは法律家が扱う「紛争」というものは、結局のところ、「対立する2つの考え方」から発生していることがほとんどだからです。そして「対立する2つの考え方」をどのように調整していくかが、法律家の仕事だからです。

 わたしどもが扱うものは「紛争」ですが、「利害の対立」という点でみると、ビジネスの世界によくあるシーンでも応用することができます。「会議での議論」や「クライアントとの交渉」、「上司と部下の対立」などあらゆる「問題」にあてはめることができます。

企画が通らない原因は?

 例えば、ある会社の会議で、A課長が「その企画をなんとしてでも通したい」と主張しています。これに対して、B部長は「それはダメだ」の一点張り。A課長が通したいと考えている企画は斬新な企画です。これまで伝統あるX社にはなかったような企画でした。その対立軸はどこにあるのか、「二項対立」で考えてみましょう。

 A課長は「売り上げが落ちているX社には新しい企画が必要だ」と考えていました。これに対して、B部長は「確かに新しい企画は当社に必要かもしれない。しかし、A課長の企画は荒削りすぎて多くの問題点や弊害がある」点を危惧していました。これは、「必要性」と「許容性」という「二項対立」で考えることができます。つまり、A課長は、新しい企画の「必要性」を主張の軸にしているのに対して、B部長は「必要性」はあったとしても「許容性」がないと反論していたのです。

  • A課長=「必要性」○
  • B部長=「必要性」○「許容性」×

 このように整理すると、A課長が企画を通すためには、「必要性」ばかりを強調してもダメだと分かります。B部長も「必要性」があることは分かっているからです。A課長がB部長を説得するためには、いままでA課長がフォローできていなかった「許容性」を取り上げればいいのです。

 「このような話をすると、次の問題点を指摘されるかもしれません。しかし、〜。…よって、この企画には問題はありません」

 といったふうに。予想される問題点(新しい企画を聞いたB部長が懸念するであろうこと)をあらかじめ説明できれば、B部長もすんなり了解したかもしれません。

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