本稿では、バングラデシュの衣料品サプライヤー企業の視察から見えた現地の状況を伝えるとともに、Next11(N11)であるバングラデシュが世界をどのようにとらえ、日本をどのように見ているのかを伝える。
バングラデシュの企業が中国の企業に競り勝った現場(第1回へ)を見たわたしは、バングラデシュという国に高い実力とさらなるポテンシャルを感じた。同時に、バングラデシュでの実際の現場を自分の目で見ない限り、その実態をつかむことはできないことも感じ、現地に赴くことを決意した。本稿では、バングラデシュの衣料品サプライヤー企業の視察から見えた現地の状況を伝えるとともに、Next11(N11)であるバングラデシュが世界をどのようにとらえ、日本をどのように見ているのかを伝える。
アジア新興国の中の新興勢力とも言うべきバングラデシュは、衣料品産業を中心に力強く独自の地位を築いており、欧米企業がすでに重要な拠点として位置付け、進出している。近年では、日本企業もその発展性に注目し、バングラデシュへの進出を進めているところである。このような状況は、各種報道から理解できるところだが、果たしてバングラデシュ現地の産業や企業の実態はどうなっているのか。
バングラデシュの現地の衣料品サプライヤー企業の視察を通じて見えてくるものは、孤立を深め、世界の流れから置き去りにされていく日本の姿だった。日本企業は、バングラデシュが世界をどのようにとらえ、日本をどのように見ているのかを知る必要がある。
2010年5月、1年にもおよぶ交渉の末、バングラデシュの衣料品サプライヤー企業であるAnnesha Style社を訪問した。この会社は、海外市場向けにセーター等のニット製品を生産・輸出している、バングラデシュ有数のリーディング・カンパニーである。従業員6,000名、月間40万着の生産能力を持ち、年間取引高は3300万ドルに及ぶ。バングラデシュ・ダッカ郊外に3つの工場を構えており、ここから世界へ多くの製品が発送されている。
バングラデシュの衣料品産業は、原糸から紡績、染色、デザイン、縫製をすべて国内で一貫して生産することが可能である。上流工程である製糸や紡績の多くは政府関係が営んでおり、そこから調達するケースがあるようだが、中国のほうが多種多様な原糸を扱っており、中国からの輸入が多いそうだ。中国との取引では、期日が遅れたりすることがあり、問題が生じることも少なくないらしく、そのあたりは日本企業と同様の悩みを持っているようであった。Annesha Style社では、近隣でつきあいがある企業から原材料として原糸を調達し、それ以降の後続工程はすべて自社の工場で行っている。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授