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» 2010年11月19日 08時56分 UPDATE

ヘッドハンターの視点:クライアントにとっての「特別な誰か」を求めて (1/2)

「スパイみたいでかっこいいよね」などと、よく言われましたが、ヘッドハンターはそんな “かっこいい”職業ではありません。

[岩本香織(G&S Global Advisors),ITmedia]

 今回はヘッドハンターの仕事に触れたいと思います。

 「いつも偉い人と美味しいもの食べられていいね」「スパイみたいでかっこいいよね」などと、よく言われましたが、ヘッドハンターはそんな “かっこいい”職業ではありません。

 来る日も来る日も、新聞、雑誌、ネットのニュースなどから人事異動、転職情報、イベントでの講演などをチェックし、データベースに入れていきます。もちろん、秘書やチームのメンバーもこの作業をしますが、全部お任せしてしまうと自分の中に残らないので、自分でも気がついたら率先して調べます。これらの積み重ねが実はとても大切なのです。超アナログな自分のSPYSEEです。

 実際、四半期に一度くらいのペースで「ランチをしよう」と誘ってくれる外資系企業の役員も少なくはありませんでした。彼らの目的は人材の角度から業界動向を知ることです。

 そういった場でわたしが話せることはほぼ100%既に公開されている情報ですが、忙しい彼らにはいちいちそれらをチェックしている時間はありません。1時間のランチの中でまとまった情報を耳から効率的に収集したいのです。また、この1時間はわたしにとっても「業界の動きは常に追いかけていますよ」とアピールする時間でもあり、ここからビジネスにつながることも多々ありました。

 契約型エージェントのある種不思議なところは、クライアントのニーズにマッチした人がいるかどうかわからない段階で既にフィーを請求することです。どんなに優秀なヘッドハンターでも「人を作る」ことはできないし、存在しない人を探し出すことはできません。

 そもそも契約型エージェントに依頼があるということは、その企業はなんらかの問題(急に誰かが辞めてしまった、業績が伸びないなど)やチャレンジ(外資系の新規参入、新規ビジネスを立ち上げたいが専門家がいないなど)を抱えています。逆に言えば、だからこそ“誰”が入るかで結果が変わってくるのです。イケイケどんどん、順調の右肩上がりの企業は既に“仕組み”が出来上がっているので“誰”が入ってもそれなりにうまくいきます。問題を抱えた企業は“誰”が入るかによって結果が大きく変わるのです。そんなクライアントにとって特別な“誰か”になりうる人を探し出すのがヘッドハンターの使命なのだとわたしは考えています。

 ただし、クライアントのニーズを聞いて、提案書を作成する段階では、市場の状況を考慮してプロジェクトの成功に対して自分なりのアセスメントの必要があります。

 以前クライアントとの話を終えて「どう考えても無理」な案件がありました。こちらから市場の状況を説明し、代替案などを出してもクライアントは頑として自分の意見を変えませんでした。高額案件だったのでかなり考えましたが、松下幸之助氏の「売る前のお世辞より、売った後の奉仕、これこそ永久の客を作る」の言葉を思い出し「申し訳ありませんが、本件ご依頼いただいても御社のニーズにマッチする方をお探しすることはできないので、お引き受けできません」と連絡をしました。

 相手はびっくりして「売り上げ責任を持ってないんですか?!」と聞かれました。マネージメントの一員である以上、オフィスの売り上げの責任はあります。しかし、「どう考えても無理」な案件を引き受けてしまうと、ものすごく運がよくない限りクライアントに満足してもらえない(=二度と仕事が来ない)し、プロジェクトはずるずると長期化し、他の案件にも悪影響が出てきます。売り上げを考えると悩ましいところですが、この場合“とりあえず引き受ける”ことがわたしにはいいとは思えませんでした。

 別の案件で同様の理由でお断りした時にはクライアントの社長から「ベンダーのくせに俺の依頼を断るとは生意気だ」と怒られました。(この発言だけで判断するのは乱暴ですが)誰に対してであったとしても、このような発言をする方は魅力的なリーダーとは言いがたく「この案件は受けなくて正解だな」と思いました。この社長はその後間もなくいなくなりました。

 ただ、残念ながら15年の間に引き受けた案件を100%成功に導けたわけではありません。IT業界の動きはとても早く、状況はどんどん変化します。ご紹介してインタビューも全て終了し、あとはオファーレターを待つばかりだったのに、急にクライアントとの連絡がとれなくなったことがあります。

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