「サービスを超える瞬間」の実現──ザ・リッツ・カールトンの経営理念と哲学スマートな経営のためのラウンドテーブル(1/2 ページ)

第3回「スマートな経営のためのラウンドテーブル」ではザ・リッツ・カールトン 元日本支社長の高野登氏の講演が行われた。高野氏は顧客に感動してもらい、企業にプロフィットをもたらす基盤として「ホスピタリティ」を提唱する。

» 2011年02月08日 08時30分 公開
[ITmedia]

 2010年11月に六本木のザ・リッツ・カールトン東京においてシリーズ第3回となる『スマートな経営のためのラウンドテーブル』が開催された。今回の講演ではザ・リッツ・カールトン 元日本支社長の高野登氏を招き、「サービスを超える瞬間」を実現する仕組みについて語ってもらった。

 高野氏はこれからの時代、サービスだけを追求していては景気の荒波を乗り切っていくことは不可能であるとし、ホスピタリティの重要性を強調した。

 講演に先立ち、日本IBMの専務執行役員 椎木茂氏が挨拶に立った。椎木氏は世界の企業における人事担当役員のインタビュー結果を示し、世界の中でもとりわけ日本は将来のリーダー育成に悩んでいることを紹介。さらに、世界のCEOに聞いた、リーダーに最も必要な資質として「創造性」と「グローバルな思考」を挙げたが、それらについても日本のCEOが考えている割合は低いことを指摘。この結果を踏まえたうえで最後に「サービスをどうとらえていけばよいか考えてほしい」と参加者に投げ掛け、高野氏の登壇となった。

満足から感動へ――「サービスを超える瞬間」とは

ザ・リッツ・カールトン 元日本支社長の高野登氏

 ザ・リッツ・カールトンは1997年に日本に上陸。世界のホテルランキングでもトップクラスを維持し続けているザ・リッツ・カールトン。最高レベルのサービスが広く認知されている結果といえるが、高野氏は改めて「サービス」について次のように述べた。

 「サービスというものが提供する内容を約束しているものだとすれば、どの従業員が提供しても同じようにそれが提供されなければなりません。そこで“マニュアル”が必要になり、それを徹底することでどの従業員でも同じものを提供することができるのです」(高野氏)

 ただ「サービスによって満足は伝わるが“感動”は伝わらない」と高野氏はいう。

 「満足だけでは、違う満足を求めてほかのホテルに行ってしまう可能性があります。しかしそこに感動が生まれたとき、お客様は再びザ・リッツ・カールトンに足を運んでくださるのです。そしてこの感動は満足を追求しているレベルでは生まれてこないのです」(高野氏)

 これは顧客の感動がプロフィットに直結することを意味している。また、その感動が大きければ大きいほどプロフィットに反映されていくとも付け加えた。

 この、感動を生み、プロフィットをもたらすプロセスを支える基盤とは何なのか。高野氏はそれを「ホスピタリティ」であると述べる。それはすなわち「相手の心に自分の心を添えて対話するということをプロとして目指す姿勢」であるという。このホスピタリティを社員が実感できたとき「サービスを超える瞬間」(=感動)を生むことが可能となるのだ。

 一見すると、ザ・リッツ・カールトンの考えはそれほど特別なことでもないように見える。しかし実際のところ、そのプロセスを踏まずに動いているホテルカンパニーが非常に多いと高野氏はいう。

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