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» 2011年04月20日 07時00分 UPDATE

まるごとオブザーバー:それでも原発は必要? (1/2)

東京電力福島第一原発の事故が一応の収束を見せるまでに年内いっぱいはかかるという見通しを東京電力が発表した。

[藤田正美,ITmedia]

 東京電力福島第一原発の事故が一応の収束を見せるまでに年内いっぱいはかかるという見通しを東京電力が発表した。その後の処理、つまり原子炉や燃料貯蔵プールから破損したものも含めて燃料棒を取り出して安全に保管し、廃炉にするために建屋や格納容器、圧力容器を分解して安全に保管処理するまでには、10 年以上の年月がかかるとされる。

 福島第一原発は1号機から4号機までは廃炉にすると東電自身も認めている。一応無事な5号機、6号機については、東電はまだ未練があるようだが、政府は廃炉という認識だし、たとえ廃炉にしなくても地元が運転再開を了承するとは思えない。地震も津波も乗り切った第二原発の原子炉4基にしても、運転再開の了承を取り付けるには相当の時間がかかるはずだ。

 電力会社が原発に執着するのは発電コストが安いからである。関西電力の数字を例に取る。キロワットアワー当たり原子力5.3円、水力11.9円、石油火力 10.7円、LNG火力6.2円、石炭火力5.7円とある(もっともこうした数字には設備の耐用年数をどう考えるか、稼働率をどのように設定するか、石油やLNGの相場など変数がいっぱいあることも忘れてはならない。さらに原子炉の場合、廃炉のコストや核のゴミの処理費用まで勘案すると必ずしもコストが安いとは言えないかもしれない)。

 値段だけではない。エネルギーのほぼすべてを輸入に頼る日本。中でも石油は90%が中東から輸入されている。サウジなどから石油を運ぶタンカーは、ホルムズ海峡やマラッカ海峡といった狭い海峡を航行する。さらに中東やアフリカからの資源輸入が増えている中国は、「海外権益を守る」として空母機動部隊の編成を急いでいる。南シナ海からインド洋も含めて自国のシーレーンの防衛が必要という判断である。

 それに対して、原子力の燃料であるウランは、オーストラリアやカナダなどから輸入され、石油などよりはずっと「安定した供給源」だということができる。原子炉1基を運転するためのウランは20トンほどであり、備蓄も容易だ。さらに使用済み核燃料を再処理して燃料を取り出すことができる。いわゆる核燃料サイクルである。資源小国の日本として原子力を拡大しようというのは当然のことと思えるが、核燃料サイクルを実現するための再処理工場は本格稼働が何度も延期され、現在のところは2012年という計画だ(再処理が遅れているために福島第一原発にあれほどの使用済み核燃料が保管されていた)。

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