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» 2011年08月19日 07時00分 UPDATE

ビジネスマンの悩み相談室:実務をして部下から仕事を奪う上司 (1/2)

リーダーの仕事とは何だろうか。それは課題解決であり、他部門を巻き込むことであり、ビジョンを描いて人を引っ張り、育成することである。チームで働くためにはリーダーが欠かせない。リーダーが自分の実務のことばかり考えていたらチームはどうなるだろうか。

[細川馨(ビジネスコーチ) ,ITmedia]

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 8月に入り、夏季休暇という人もいるだろうか。今回は、実務ばかりを行い部下から仕事を奪う上司について話したい。

<事例>

 ある食品メーカーの法人営業部のA課長は若干30歳。華々しい営業成績を残し、若くして課長に昇進した。彼はやる気に満ちている。月曜日の営業会議で次のように言った。

 A課長:本部から今期の目標が上がってきた。頑張ってこれを達成してほしい。ついては、次回の会議までにどのようにしたら達成できるか、それぞれ考えてきてほしい。

 1週間後の会議。

 A課長:先週の会議で何か考えてきてほしいと伝えたが、いい考えはあるか?

 I君:このような高い目標を達成するには、これまでのお客さまだけに頼るのではなく、新規にお客さまも開拓する必要があると思います。問い合わせはあったものの、受注には至っていない方がいるので、その潜在顧客のリストを作り、アプローチしてみるのはどうでしょうか。

 A課長:いくら高い目標だからと言って、経済状況の悪いこの時期に新規のお客様を獲得するのは大変だろう。どれくらい効果があるんだ。まずは今いるお客さまにもっとニーズがあるか聞いてみたほうがはるかにいいよ。

 I君:でも……。

 A課長:わたしが付き合いのあるS社長に連絡してみよう。一緒に会いに行くか。

 I君:はい。

 数日後I君はA課長と一緒にS社長を訪れた。

 S社長:いい商品だと思うのだけれど、うちも厳しくてね。今は注文をこれ以上増やすのは難しいな。

 2人はしぶしぶ帰ってきた。I君はなんだかやりきれない気持ちになった


部下の仕事をうばう上司

 I課長は何が一番いけないだろうか。それは部下の仕事を奪っているのである。I君がせっかく考えて提案したのに、はなからだめだと言い、自分のやり方に従えと言わんばかりである。

 わたしは研修やセミナーなどを通して、多くの管理職に接しているが最近感じることがある。それは管理職なのに、自分の実務ばかり優先している人たちがとても多いということである。チームで動くことでより大きなことが達成できるのに、それを軽視し、自分でやってしまうのである。なぜそのような事態になっているのだろうか。その原因は次のとおりである。

 1、実務は簡単でとっつきやすい

 2、自分の職務を認識できていない

 最初に言えることは実務は簡単でとっつきやすいのである。これまでやってきたことの延長であり、これまでの方法が通用するので、失敗がない。一方で、マネジメントは答えのない世界で、これまでの経験で答えがすぐに出せるものが少なく、とっつきにくい。人間はともすると楽な方に行きたがる。よって、答えのないものは厄介と感じチャレンジしたがらない。

 次に、こちらが根本的な原因かもしれないが、自分の職務を認識できていないということがある。実務が仕事だと思っており、それ以外に何をすべきか分かっていないのである。

 課長や部長などのリーダーの仕事は何だろうか。それは、目標を達成するのは大事だが、一方で課題解決であり、他部門を巻き込むことであり、ビジョンを描いて人を引っ張り、人を育成することである。それなのに、自分の実務のことばかり考えているのである。

改善するには?

 それでは、改善するにはどうしたらいいだろうか。実務ばかりをせずに自分が本来やるべきことに取り組むには何が必要だろうか。何よりも、「自分に求められる仕事は何か?」を改めて洗い直し、明確にすることである。「課長に求められることは何か」「部長に求められることは何か」を問いかけてみる。

 自分で答えが出ない場合には、本を読んだり、直属の上司に相談したりするのもいいだろう。長期的な視点を持って事業を考えていく、人材を育てる、他部門との連携をするなど、いろいろな視点を得られるはずである。係長は係長の仕事、課長は課長の仕事、部長は部長の仕事をすべきである。

 なお、わたしはリーダーには2種類あると考えている。1つは現場のリーダーであり、もう1つは人を育てるリーダーである。現場のリーダーとは、手本を見せて引っ張っていくタイプである。イチローはこのタイプに当たり、自分のプレイする姿、後ろ姿を見せながら、まわりを引っ張っていくタイプである。職人的要素が求められる仕事では、これはとても大切になる。

 一方で、人を育てるリーダーは、人材マネジメントのプロである。目標を設定し、それに向かって叱咤激励しながら、人材を育成していく。ビジョン、ミッションを提示し、それに向けて引っ張っていく。

 わたしはどちらのリーダーが正解ということはなく、どちらも正解だと思っている。ただし、自分がどちらのリーダーになるべきかをしっかりと認識し、それぞれに応じた役割を果たすことが大切ではないかと考えている。

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