連載
» 2011年10月07日 08時00分 UPDATE

トークライブ“経営者の条件”:これからの経営者に求められるのは“聞きたくないことも聞ける能力” 悪い情報が入ってくるために――コーチ・エィ 鈴木義幸社長 (1/2)

経営者は、しばしば自分の感覚や認識に依存しすぎ、"裸の王様"になってしまうことがある。本人が認識していなくても、本人に都合の悪いことが伝わらないように周囲の方が気を遣ってしまい、結果として本人の耳に届いていないことも多い。そういった問題への対策の1つとして注目されるのがコーチングだ。

[岡田靖,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


 8月30日に開催されたトークライブ「経営者の条件」(主催:経営者JP、協力:ITmediaエグゼクティブ)第11回のゲストは、コーチ・エィ 取締役社長の鈴木義幸氏、コーチングに特化した企業のトップだ。同社は、日本にコーチングの概念が入り始めた2001年に設立され、現在の社員数は約150名、そのうち110名ほどがコーチとして活動しており、エグゼクティブ向けのコーチングや、コーチングを通じた組織変革ソリューションなどを手掛けている。その顧客企業の多くが上場企業で、合併やグローバル展開を進めている。また市場の競争が非常に厳しい業界にいるなど、変化に直面している企業が圧倒的に多いとのこと。

エグゼクティブ自身の中にある、問題を引き起こす原因を、自ら発見し改善していく手助けをする

suzuki290.jpg コーチ・エィの鈴木義幸社長

 そもそもコーチングとは何なのか、どういった目的で行うのか、そして実際どのようなものなのかといった点について気になる読者は多いだろう。鈴木氏は、コーチングについてこう説明する。

 「コーチングは、相手に問いかけることで相手が自発的に答えを引き出すのを支援するプロセス。相手が未来に対し目標を作り、それに向けての解決方法を探っていけるようにする、というのがコーチのスタンス。コーチの仕事は相手に表現させることだ」(鈴木氏)

 答えを出すのはコーチでなく、コーチングを受ける側だというわけだ。ティーチングとは違って答えを直接与えることはしないので急を要する問題には不向きといった制約はあるが、コーチングを受ける人が自分で答えを導き出すことから、より問題の根本に迫ることが可能となる。そして、とりわけエグゼクティブに対するコーチングが注目される理由は、企業活動への影響が大きいことに加えて、エグゼクティブの多くが共通して持っている性質にもあると鈴木氏は言う。

 「エグゼクティブというのは、元々自分で課題を見つけ、それに対処してきた人が多いように思う。そうして成功体験を積み上げてきたので、他人の言う通りにしたり、アドバイスを聞く、ということも少ない。その結果、回りから『悪い情報が入りにくい』状態になってしまっていることがよくある」(鈴木氏)

 そうして、組織内には小さな問題点がいくつも生じているのに、当の本人が得られる情報には問題の兆候も見当たらず、現実から乖離した判断を下すようになっていってしまう。エグゼクティブ自身の性格や態度、雰囲気といったものが、巡り巡って誤った判断に繋がってしまうことがある。

 「エグゼクティブコーチングの大前提となるのは、『いま直面している問題はあなたに原因がある』『あなた次第で状況は変わってくる』ということ。そして、『あなたの何が、それを引き起こしているのか』、『何をしたらいいか分かっているのに、それができていないのはなぜか』といった問いかけを通して、本人自身に考えてもらう」(鈴木氏)

 ここで重要なのが、本人の自己認識と周囲からの認識のギャップだ。コーチングは本人との対話で終始するのでなく、本人の周囲にいる部下や同僚、上司などといったステークホルダーも重要な存在として扱われる。コーチ・エィのコーチングプログラムでは約半年を1クールとしており、まず最初に本人へのプレコーチングを実施した後、本人の周囲にいるステークホルダーへのインタビューなどを詳細に行う。その上で組織変革のゴールなどコーチングのターゲットを決定し、以後は2週間に1時間ほど本人と面談しつつ、周囲へのリサーチも随時行っていくという。

 こうしたコーチングを通じて得られる成果はさまざまだ。もともと抱えていた問題点や設定した目標によっても違ってくる。コーチ・エィの顧客の例でいえば、ある外資系の企業で離職率を評価基準としてエグゼクティブ・コーチングを実施し、2年間の取り組みで離職率を4%低減したケースがあるとのこと。また、ある生命保険会社では、支店長の一部にコーチングを受けさせ、コーチングを受けていない支店長との違いを比較したという。これらは分かりやすい例だが、コーチングは必ずしも業績に直結するような数字で評価できるとは限らない。コーチングは、受けた人や周囲の人々に内面的な変化をもたらし、「気付き」や「観察力」を与えるものだからだ。

 「例えば、コーチングを受けて『自分が100%でないと気付いた』という感想を持つようになった人もいる。ある社長は、全国の拠点を巡って社員の話を聞くようにしていたつもりだが、コーチングを通じて周囲へのインタビューを行ったところ、「実は社長に遠慮していいたいことが言えなかった」といったコメントが多かったこともある。これからの時代、経営者は未来を予測する能力を持っていなければならず、そのためには正しい情報を得ていく必要がある。しかし置かれた立場やエグゼクティブ自身のモノの見方や捉え方によって、クレームや部下の本音など、「本当の情報」が入ってこないケースが非常に多い。そういう見逃しがちな情報を発見していく力や、聞きたくないことにも耳を傾ける能力や意識を持ってもらうのがコーチングともいえるだろう」(鈴木氏)

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆